日本刀の魅力について語りつくす!
「日本刀は美術史学の範疇ではない」と言われてきたと、渡邉館長が本書の中で述べています。そして「日本刀を日本の工芸・美術の中に位置づけしよう」と奮闘されてきました。しかしこの本を読み終えた時、あなたはきっと思うでしょう。「日本刀は美術や芸術の中におさまるものではない。日本民族の誇りであり、魂である」と──。刀剣の歴史はもちろん、鑑賞の仕方から刀剣のお手入れの方法や保存方法についてなど、初心者にもわかりやすく読みやすい。また、刃文、地文、匂、沸、働きの味わい方や、銘の改竄についてなどなど、中級から上級者の方にも満足できる内容です。渡邉妙子氏の妖刀に籠められた怨念の恐怖体験といった実話も集録されている、刀剣ファンならずとも押さえておくべき一冊です!
著者プロフィール
渡邉 妙子(わたなべ・たえこ)
1937年生まれ。慶應義塾大学通信教育課程卒業。同年に財団法人佐野美術館学芸員。2000年に同館館長に就任し現在に至る。静岡大学教育学部非常勤講師、慶應義塾大学文学部非常勤講師、静岡県文化財審議委員会委員、沼津市教育委員を歴任。全国美術館会議理事、日本博物館協会理事、日本美術刀剣保存協会評議員。文部大臣表彰、静岡県博物館表彰、静岡県文化奨励賞、静岡県知事表彰など受賞。著書に『日本刀』(佐野美術館図録)、『日本刀は素敵』(静岡新聞社)、『名刀と日本人』(東京堂出版)、『日本刀の教科書』(東京堂出版、共著)がある。
目次
プロローグ 日本刀との出会い
第1章 私の修行遍歴
- 佐野美術館と佐野隆一翁
- 刀剣の愛称に「丸」を付けるのは
- 国宝の「長光」をいただく
- にべも無く断られて
- 昭和の大目利き
第2章 名工・名刀って何?
- 気高さに胸打たれた三条宗近
- 「童子切」で知られた伯耆安綱
- その姿は王者の風格、一文字吉房
- 躍動的な魅力、長船長光
- 直刃でさわやかさを秘めた来国俊
- 僧兵たちの腰にふさわしい手搔包永
第3章 正宗とは
- 正宗を評価した信長
- 正宗は本当に名工か?
- 世にくすぶっていた正宗不在論
- 正宗はいなかった?
第4章 日本刀と鉄の縁
- 多彩な鉄のすばらしさ
- やわらかな地鉄
- 鉄に五彩あり
- 砂鉄から玉鋼
- たたら製錬
- アフリカの砂鉄製錬
- 自家製「たたら製錬」
第5章 刀剣づくりと刀工銘
- 鉄の鍛錬
- 鞴はシンプルで優れ物
- 年紀銘はなぜか二月と八月
- 金象嵌銘って何?
- 本阿弥家の鑑定
- 刀の茎に朱銘
- 銘の改竄
第6章 日本刀の鑑賞と目利きの達人
- 室町時代の大目利き 宇都宮三河入道
- 刀剣の鑑定もした能阿弥
- 天下の名刀の証、本阿弥光徳の銘
- 「黒庵」って誰?
第7章 鑑賞するために
- 刃文──自然と人が生み出す美
- 地文──鉄という素材の美しさ
- 匂──マルテンサイトの映える光
- 沸──小さな円らの輝き
- 働き──鉄の変化が織り成す躍動感
第8章 優雅な日本刀の反り
- 心奪われる曲線
- なぜ反りが誕生したのか
- 直線は目の錯覚
- 押形を見ただけで刀が分かる
- カラー写真の威力
- 沸と匂の美しさを撮る
第9章 日本史と刀
- 守り刀として
- 江戸幕府の威信
- 秀吉の刀狩り
- 敗戦による刀狩り
- 武田信実の怨念
- 日本刀を収集したアメリカ人
第10章 日本刀の手入れ
- あなたにもできる
- 手入れの基本と様々な工夫
- 日本刀の保存法
第11章 安倍昭恵総理夫人との対談
- 刀剣女子ブーム来たる
- 日本刀は鉄で作る宝石
- 「名刀は青く澄む」
- 刀剣は神と結び付く
- 鎌倉武士が育てた日本刀
- 正宗と清麿
- 各時代の最高の技術を集めて
- 古刀、新刀、新々刀……
- 日本人にしか作れない曲線
- よく斬れることが武士の情け
- 女性が刀を守る時代に
- (『WiLL』2016年9・10月号より)
改版にあたって