特捜は「巨悪」を捕らえたか

宗像 紀夫 著
定 価:
本体1500円+税
判 型:
四六判
ページ数:
216ページ
ISBN:
9784898314807
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元東京地検特捜部長・宗像紀夫。
彼が明らかにした「極秘メモ」「日記」の数々……
初めての著作!
——随所に捜査時のリアルタイムの日記も挿入。
臨場感あふれるノンフィクション回顧録

「冷たい表情の裁判官」「居丈高な検察官」「金儲け主義の弁護士」になるな……
・江副浩正、田中角栄逮捕から日産ゴーン逮捕まで——
・地検特捜部の仕事は「世の中のドブさらい」「闇を照らす」のが仕事だ!
・村木事件等々、捜査が粗雑で、威圧的、権力的になった特捜は心配だ!

・特捜の手がける独自捜査事件は、マスコミに気付かれず着手(逮捕)できれば半ば成功したも同然。日産ゴーン逮捕は「保秘」に成功し、マスコミは「してやられた」というしかない。
・平成の大疑獄リクルート事件の発端に触れた時「私の体の中を電気が走った!」
・リクルートの本命は中曽根康弘だった。しかし……「証拠」優先の捜査では藤波までが限界だった。見込み捜査はできない。藤波は「中曽根の身代わり、人身御供」ではない。
・実は、本命(P3C)に捜査の手が届かなかったロッキード捜査の悔しさ。そのとき、吉永祐介主任検事は……
・特捜検事は週刊誌を愛読する。国民からの告発する投書も熟読する。
・文化功労賞などで選考委員に金銭などを使って働きかけた人がいた。
・被疑者は雲隠れのため入院すると、それから本当の病気になる。
・リクールトの時、捜査ルートは何処からとの質問を受けて、ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」という映画をヒントに言った。「北北西」(NNW) ……つまり「NTT」と暗示したが、気づく記者はいなかった……。
・村木事件、小沢事件(陸山会事件)、佐藤栄作久事件(弁護士を担当)など、「何か事件をやらなければいけない」「自分が特捜部長の間に、政治家や高級官僚を一人もやっていない、前の人は二人もやっているとか……」そんなあせりが、強迫観念が「冤罪」「見込み捜査」「改竄事件」を起こしたのではないか。特捜部の「勇み足」をいさめる。
・大物を摘発するのであれば、何をやってもいいという風潮が特捜に蔓延しているのではないかとの強い危惧を感じる。
・弁護士として、主任検事の筋読みに無理に供述を当てはめるような強引な事例が目立つことに気付いた。捜査が粗雑で、調べ方が威圧的、権力的で、利益誘導的な質問を平気でする事例(佐藤栄作久事件)に直面し、その弁護を引き受けた。特捜地検と対峙することもあった!
・捜査機関は常に撤退する勇気を持たなければいけない。
・世の中の喝采をあびたくてイケイケドンドンで真実でないものを真実とする、正義に反する捜査が行なわれていないか、自己検証を忘れるな。
・自白を引き出すには、物的証拠や状況証拠などの丹念な吟味が必要なのだ。
・ダグラス・グラマン事件で、日商岩井の島田三敬(常務)から重要な供述を引き出し、翌日「調書」にしようと思ったら、その夜(翌日未明)に彼が自殺。検事を辞めようと吉永特捜部長に申し出たことも…。
・「冷たい表情の裁判官」「居丈高な検察官」「金儲け主義の弁護士」になるな……

地検特捜部に取り調べられ訴追された政財官界の「被疑者」たち——
カルロス・ゴーン、田中角栄、児玉誉士夫、小佐野賢治、小沢一郎、金丸信、藤波孝生、橋本登美三郎、佐藤優、村木厚子、高石邦男、江副浩正、真藤恒、榎本敏夫、島田三敬、若狭得治、佐藤栄佐久……ほか。本書でも言及!

著者プロフィール

1942年東京生まれ。65年中央大学法学部卒業。同年司法試験合格。68年、検事に任官し、秋田、東京、福島などに勤務のあと、東京地検特捜部に配属。93年、東京地検特捜部長に就任。高松高検検事長、名古屋高検検事長などを歴任。ロッキード事件丸紅ルート、リクルート事件、ゼネコン汚職事件など多数の事件を担当した。2004年に退官し、中央大学大学院教授に就任(12年退職)。現在、弁護士、内閣官房参与。

目次

プロローグ——リクルート事件以来の衝撃が走った日産ゴーン会長逮捕

東京地検特捜部のゴーン会長逮捕・起訴の衝撃

ゴーン氏逮捕の翌日、弁護人依頼の打診を受けた……

 

第一章 地検特捜部はあらゆる不正を見逃さない

 「郵便不正事件」(村木事件)の衝撃

特捜部は戦時中の闇物資摘発から生まれた組織

特捜部は検察官の中のエリート集団か

検察の組織とは

特捜部はヤクザ抗争事件はやらない

 「仙台3000」のメモから「ゼネコン汚職事件」を摘発

張り込み、逮捕は検察事務官がする

 「賄賂」か、「社交儀礼」か、それが問題だ

第二章 平成の大疑獄・リクルート事件の全真相

リクルート事件が報じられた時「私の体の中を電気が走った」 

殖産住宅事件の最高裁判例が追い風になった

特捜部で事件担当をめぐり「軋轢」

捜査態勢のスタート——「事件が猛烈に面白くなってきた」

次々と大物を逮捕

真藤会長の秘書は小野田寛郎さんもびっくりの忠臣

江副氏は「しぶとい男」だった

 「黙秘」する江副氏を自白に追い込んだ!

検事は江副氏を脅迫したのか? 

 「FIN」か「FINE」か、それが問題だ!

 「北北西に進路を取れ」という映画を見ていなかった司法記者たち

なぜ、藤波孝生元官房長官が立件されたのか

なぜ中曽根元首相までたどり着けなかったか

中曽根氏に関しては江副氏の口が堅かった

宮澤前蔵相に江副氏から五千万円の裏金が送られていた

青木秘書自殺により竹下首相追及は頓挫

裁判後、江副氏から贈られてきたオペラチケット

藤波氏の立件・起訴は検察(私)の失敗作?

リクルート事件の経過

第三章 角栄裁判(ロッキード事件)は暗黒裁判に非ず

米国発の「ロッキード事件」

ロッキード事件では控訴審公判を担当

 「角栄裁判」に於ける「嘱託尋問調査」をめぐる大論争

 「嘱託尋問調書」なしで有罪に

なぜ特捜部はP3Cの捜査に動かなかったか

榎本三恵子氏の「ハチの一刺し」証言

ロッキードはトップまでやった

P3C本命説に対して……

堀田力氏の悔しさ

検察は基本的に時の国家権力とは離れている

ロッキード事件の経過

第四章 ダグラス・グラマン事件は、ロッキード事件の敵討ち

正月休み返上でダグラス・グラマン事件に取りかかる

島田常務から重要な供述を引き出すことに成功した矢先に……

島田氏の自殺は私にとって痛恨の思い

吉永祐介氏が託した極秘資料の衝撃

私にとって懐かしいこと

ダグラス・グラマン事件の経過

第五章 その後の地検特捜部に勇み足はなかったか

①地検特捜部の汚点・村木事件の真相とは

特捜部のあせりが、「村木事件」を引き起こした

そもそもの「見立て」が間違っていた

村木氏を泣かせた検事の一言 

捜査自体が杜撰だった

②佐藤栄佐久(元福島県知事)収賄事件は冤罪だ

村木事件と佐藤栄佐久(元福島県知事)事件との相似性

実質無罪の高裁判決

 「賄賂ゼロ円」で有罪の最高裁の判断は正しかったか

裁判結審後も闘っている佐藤元知事

検事、弁護士、どちらの立場に立っても、真実を求めるのは同じ

ゼネコン汚職事件時の検察の汚点

③「陸山会事件」は地検特捜部の暴走、勇み足だったのか

なぜ小沢一郎氏は無罪になったのか

特捜不要論の背景に「国家権力」の罠あり 

可視化によって行き過ぎた取り調べがなくなる 

日本版司法取引制度とは

④「モリカケ」問題はマスコミの暴走、勇み足だった

その程度の「忖度」は収賄罪にはならない

なぜ文書改ざんにいたったか

文科省局長の息子の不正入試は、なぜ贈収賄になるのか

特捜検事は撤退する勇気を持たなければならない

検事と「ヤメ検」の関係

 
エピローグ——検事も弁護士も真実を追求するのは同じ——弁護士としての日々

 「冷たい表情の裁判官」「居丈高な検察官」「金儲け主義の弁護士」になるな

検事の仕事は人の心に痛みを与えることも自覚すべき

 

おわりに——〝リクルート事件・主任検事の真実〟を書き終えて……

日記と読書は心の糧

年月を経て懐かしくなる

 

参考文献

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