日米戦争を望んだのは誰か

渡辺惣樹 著
定 価:
本体1500円+税
判 型:
単行本
ページ数:
224ページ
ISBN:
9784898314951
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歪んだ歴史解釈を見直そう! 歴史観は自らの頭で考え醸成するものだ!
戦争を煽り、真珠湾攻撃を待ち焦がれていたルーズベルト
原爆投下に固執したスチムソンは非情な軍国主義者だった

正統派と呼ばれている歴史書の近現代史解釈は歪んでいる。読者には、本書を通じて、これまでの正統派歴史書で描かれるあの戦争の姿が、「もしかしたら真の姿ではないかもしれない」という疑念を持っていただければ幸いである。その疑念があれば、巷に溢れるリベラル的倫理観が散りばめられた歴史書を、批判的(懐疑的)に読めるようになるはずである。それはけっして善悪の倫理観からのものではなくファクトに基づいた合理的な批判となる(本文より)。

著者プロフィール

1954年、静岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。日米近現代史研究家。30年にわたり、米国・カナダでビジネスに従事。米英史料を広く渉猟し、日本開国以来の日米関係を新たな視点でとらえた著作が高く評価される。『日米衝突の萌芽1898-1918』(草思社)で第二十二回山本七平賞奨励賞受賞。著書に『日米衝突の根源 1858-1908』(草思社)、『第二次世界大戦アメリカの敗北』『戦争を始めるのは誰か』(文春新書)など、訳書にフーバー『裏切られた自由(上下)』、チャールズ・カラン・タンシル『裏口からの参戦(上下)』(草思社)などがある。

目次

はじめに──歪んだ歴史解釈を見直そう

 

第一章 ルーズベルトの本当の敵は誰だったのか?

「アメリカ第一主義委員会」との攻防

ルーズベルトに立ちはだかった世論の壁

米国大統領が英国の一介の大臣でしかなかったチャーチルに親書を送った。その真意はどこにあったのか?/対独戦争参戦を望んだFDR/参戦を肯じなかった米国民/FDRの噓

反ベルサイユ体制・反ニューディール勢力の勃興

自由競争では「神の手」が働き市場価格が決まるが、ルーズベルト政権では官僚が「神」となり、実質「社会主義化」していった/ヘンリー・スチムソンとは何者か?/米国内で広がる「非干渉主義」の世論/民主党内にも反ニューディール派が台頭

ゲッぺルスも絶賛する英国の対米プロパガンダ

ヒッチコックの映画『海外特派員』は「プロパガンダ映画の最高傑作。多くの聴衆の心に(ドイツへの)敵意を醸成する第一級の作品だった」/諜報工作機関「BSC」とは/徐々に抹殺されていく反FDRの言論人たち/ハリウッドに浸透し「干渉主義称賛映画」製作を指令

非干渉主義の旗手、かく戦えり リンドバーグの抵抗その一

ニューヨーク・パリ間のノンストップ飛行を成功させた英雄は、のちにルーズベルト最大の敵となった/莫大な懸賞金付きのプロジェクト/一躍、国民的アイドルになった/悲劇の英雄、祖国を脱出し英国へ去る/ベルリン五輪開催目前のドイツからの招待/ゲーリングの尋常ならぬ歓迎ぶりの背景にあった人種観/警戒していたFDRとの面会/FDRの「敗北」宣言は「噓」だった/日本にもやってきたリンドバーグ

ナチスのレッテルを貼られ真珠湾攻撃と共に去りゆく リンドバーグの抵抗その二

リンドバーグによる干渉主義反対の世論は、「アメリカで『我が闘争』が説教される」と煽動され、最後には寝耳に水の日本の真珠湾攻撃で消滅していった/「アメリカン・ヒトラー」と呼ばれたリンドバーグ/ヒトラーがやって来る/「日本の悪行=ドイツの悪行」に気付いたFDR政権/アメリカ第一主義運動の弱点/FDRの「本当の敵」

第二章 真珠湾攻撃を恐れていたハワイ

地元メディアは日本軍来襲を予見していた

来週末、日本が攻撃してくる──地元ハワイの新聞は1941/12/7(アメリカ時間)の一週間前に報じていた/「来週末にも攻撃の可能性」/なぜか黙殺される「風」暗号の傍受/爆撃標的「網目」マップ

震えながら「真珠湾奇襲」の一報を待っていたルーズベルト

日本の真珠湾攻撃をリークしたのは誰だったのか。その目的は何だったのか?/「未必の故意」に対するFDRの「鬼の涙」/リーク元は誰か/運命の報告を待ち構えていたルーズベルト

 

第三章 原爆を落とした男 ヘンリー・スチムソンの野望

恐怖の「スチムソン・ドクトリン」は、こうして生まれた

ヘンリー・スチムソンはいかにして原爆投下の実務最高責任者になったのか/FDRの「武器」として/「日米開戦」のための「スチムソン・ドクトリン」/法律家から陸軍長官へ/「国際連盟に参加すべき」/社会ダーウィニズムに傾倒/国際連盟とパリ不戦条約/フーバーの実像/日本への「思いやり」

スチムソンにとっての「善」と「悪」

スチムソンは単純な善悪二元論で日本を見ていた。とりわけ満洲を見る彼の目は厳しくなっていった/ロンドン海軍軍縮条約/浜口首相襲撃事件の衝撃/満洲に現れた「悪」の勢力/ある若手外交官の暗躍

スチムソンに操られた国際連盟脱退

スチムソンは日本の満洲権益を認めなかった。日本の立場を考慮した外交に転換することはなかった/フーバーとルートの諫めと懸念/日本に同情する英仏蘭/スチムソンに与した小国/リットン調査団の無理解/「松岡を跪かせることなど簡単だ」/日米「行き止まりの道」へ

スチムソンの残した「爆弾」

「悪の国」と決めつけられた日本への包囲網がアメリカをはじめ中国、ソビエトなどによって日々強化されていく/日本嫌いを煽る宣教師たち/盧溝橋事件の真因/呼び戻されたスチムソン/擬似「挙国一致」内閣/幻の東京空爆計画 

待ち焦がれた真珠湾攻撃

日本に最初の一発を撃たせる──ルーズベルトの狙い通り、日本は真珠湾にやってきた。「悪の帝国」を叩き潰す戦争が始まったのだ/英国を助けたいFDR/度を越したソビエト支援/最初の一発を撃たせるための策略の数々/米国民には隠蔽された「最後通牒(ハルノート)/傍受された「東の風、雨」/「恥辱の日」は、スチムソンの「勝利の日」だった

原爆投下へのカウントダウン

日米開戦直前、米国で始まった「新兵器」開発。「文明を破滅させる〝フランケンシュタイン〟」はいかにして生まれたのか/科学研究開発局/動き出した「マンハッタン計画」/スチムソン主導/使用への最終プロセス/標的都市は京都か、それとも

原爆投下とスチムソンの葛藤

もしもスチムソンがリアリストだったら、原爆投下はなかったかも知れない/ポツダム会談中の「吉報」/チャーチルの一押し/「史上最高の出来事だ!」/メディアからの批難/スチムソンの葛藤/日本にとって、スチムソンとは

 

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