PKO、東日本大震災、北朝鮮ミサイル、中国艦船尖閣侵入……
「日本の危機」に自衛隊トップはその時、どう決断したのか。
自衛隊46年、統合幕僚長4年6ヶ月の自衛官人生、今そのすべてを語る。
危機管理! 顔の見える自衛隊! 9条改憲問題! そしてかくあるべきリーダー像とは?
退官後、テレビなどの討論番組にもひっぱりだこの著者が初めて綴った自叙伝的防衛論。
防衛大補欠入学するも海自幹部候補生学校ともに首席で卒業。米海軍大学30ヶ国中トップ、しかし防衛部長になったと思ったら「あたご」事件で更迭。ところが、ある偶発的事件で辛くも復活し、異例の3回の定年延長で統合幕僚長在職4年6ヶ月。そして、この間自衛隊にとって節目となる大きな出来事にほとんど立ち会うことになった--。
「防衛問題とは一部の軍事マニアや軍事オタクのものではなく、常識論だ。例えば、自分は何かあったら友人に助けてもらうが、友人に何かあってもお金はだすが助けないという人関係は常識的にはありえない。スポーツでもそうだが、守るだけで攻めることをしなければ試合には勝てない」
著者プロフィール
一九五四年(昭和二十九年)、北海道生まれ。昭和五十二年に防衛大学校機械工学科卒業後、海上自衛隊入隊。第三護衛隊群司令、佐世保地方総監部幕僚長、海上幕僚監部総務部長、海上幕僚監部防衛部長、掃海隊群司令、海将に昇任し護衛艦隊司令官、統合幕僚副長、自衛艦隊司令官、海上幕僚長を歴任。平成二十六年、第五代統合幕僚長に就任。三度の定年延長を重ね、在任は異例の四年半に渡った。平成三十一年四月退官。川崎重工業(株)顧問。本書が初めての著書になる。
目次
プロローグ 北朝鮮のミサイル
第一章 防衛大学校に補欠合格
洞爺丸台風の年に函館で生まれた/海軍士官、海上自衛官だった父/「防衛大に行く? 気は確かか」──自衛隊との「ソーシャルディスタンス」/一難去ってまた一難──健康診断で不合格となり……/たちまち防大入校を後悔/「自衛隊は違憲」との判決に衝撃/『坂の上の雲』との出会い/防大機械工学科を首席で卒業
第二章 希望の配置にはいつもつけずに
幹部候補生学校で海上自衛官としてスタート/真珠湾を背負って生きてきた父の死/航海長になれず、またも学校へ/「筑波大学大学院の受験を命ず」/「なだしお」事故報道は「フェイクニュース」だった
第三章 「顔の見える」自衛隊へ
海上自衛隊と米海軍の関係/湾岸戦争で「人的貢献」を突きつけられた/ハードルが高かった自衛隊派遣/自衛官を安全地域に、民間人を危険地域に/自衛隊派遣反対派の三つの合言葉/大金を出したのに感謝広告に日本の名はなかった/冷笑と罵倒のなかで危険な任務をやり遂げた掃海部隊/「顔の見える自衛隊」が始まった/PKOでカンボジアに陸上自衛隊を派遣
第四章 艦長を経て米海軍大学留学へ
もう、しょうがない、艦長をやれ/冷戦終結後の防衛計画大綱/阪神淡路大震災での自衛隊災害派遣/平和安全法制を先取りした米海軍大学卒業論文/合同演習に〝面倒〟を持ち込んだ日本/米軍高官から称賛された私の論文/初の「海上警備行動発令!」/護衛隊司令として舞鶴へ
第五章 9・11同時多発テロ─ショウ・ザ・フラッグ
萩崎事件から危機管理の基本を学んだ/マスコミの機先を制した覚醒剤事案/「あなた、どこにいるの!!」と妻に怒鳴られ/日の丸を掲げよ!/対米支援リストの策定/画期的だったインド洋補給オペレーション/英国に油を補給すると米国が怒る?/苛立つ派遣部隊に「犬死にはさせません」/イージス艦を入れるかどうかで一騒動/空母「キティホーク」「護衛」作戦/官邸に話が通っていなかった/誰もが懲戒処分を覚悟したが奇跡が起こった?/実戦を前提とした「自由と責任」/陸上自衛隊のブーツ・オン・ザ・グラウンド/地元の人々との交流/「統合幕僚監部」の設置
第六章 イージス艦「あたご」衝突事故で防衛部長更迭
二十万ガロンか、八十万ガロンか/「誠心誠意」がアダに/マスコミは「あたご」批判一色/イージス艦「あたご」事故の教訓/防衛部長を更迭され〝最後の配置〟へ/読書の価値──「負くることを知らざれば害その身にいたる」/危険な実機雷処分の訓練中に緊急事態発生/降ってわいた「田母神論文問題」/さらに思わぬ形で昇任し、護衛艦隊司令官に
第七章 統合幕僚副長就任─東日本大震災の怒濤の日々
即応には「オフ」の人間が必要だ/東日本大震災発生六分後に災害派遣要請/福島原発に向かった決死隊ヘリ/日米同盟のあり方を再認識したトモダチ作戦/「吉田ドクトリン」の本当の意味/部下が判断できるように優先順位を与える
第八章 海上幕僚長就任─「あたご」事故の教訓
伝統の継承/広瀬中佐と佐久間大尉/「たちかぜ」いじめ事件/いじめを止めなければ「強い軍隊」にはなれない/中国軍艦からの火器管制レーダー照射/「あたご」の教訓が生きた「おおすみ」事故
第九章 統合幕僚長の四年六カ月
指揮官はいつも上機嫌でなければならない/部下に任せるものは任せる/「資料は少なく」「会議は短く」「電話も短く」/指揮官の覚悟/米軍最高幹部から贈られた「武運長久」の日章旗/「ハリスさん」と「カワノサン」/日米の双務性を高める平和安全法制の成立/災害対応と自衛隊/自衛隊違憲論は破綻している/憲法への明記は「ありがたい」/「自衛隊は国民が認めているからそれでいい」でいいのか/「誇りの旗」は絶対降ろさない/韓国軍艦から受けたレーダー照射/無礼と言う方が無礼だ/動きをエスカレートさせた北朝鮮/一段と厳しさを増す北朝鮮情勢/イージス・アショアの導入と断念/「専守防衛」と「敵基地攻撃」の考え方について/緊張から一転対話へ/感無量の「帽振れ」で心置きなく自衛隊を去る
おわりに
年譜