牡蠣とトランク – WAC ワック
書籍

牡蠣とトランク


牡蠣とトランク 表紙

「牡蠣とトランク」

畠山重篤(牡蠣の森を慕う会代表)著

パトリック-ルイ·ヴィトン(ルイ・ヴィトン五代目当主)画

1500円(+税)

牡蠣(かき)の友情

「家が流されるー」
「アアー、船も、工場も流れてゆくー」
……
やがて二波目が襲ってきた。第一波とは桁(けた)違いの高さの、黒い水の壁だ。映画『天地創造』のノアの方舟のシーンを思い出した。

話は50年前にさかのぼる──
フランスの牡蠣(かき)にウィルス性の病気が発生、フランス料理には欠くことができない牡蠣が絶滅の危機に瀕した。これを伝え聞いた漁師たちは「よし、宮城ダネ(牡蠣の種苗)を送って助けよう」と立ち上がった。
東日本大震災で牡蠣養殖のイカダが全滅したことを知ったフランスでは「今こそ恩返しだ!」とばかりに料理人組合が音頭をとって支援にのり出した。
フランス料理界の大御所アラン・デュカスらのよびかけに、日頃から環境問題に熱心なルイ・ヴィトンも支援に加わった。
畠山さんの養殖場を訪れたパトリックさんは創業者ルイ・ヴィトンの直系で五代目当主にあたる。畠山さんが本書の話を切り出したところ「それなら、わたしの絵を入れてはどうか」と、“友情出演”の申し出が……。
実はパトリックさんの絵は、フランス社交界で高い評価をうけており、オークションで高値で落札されたことで有名な存在だという。
本書は、大震災・大津波の貴重な証言記録であるとともに、牡蠣の友情がはぐくんだ絆が、いまいっそう力強く日仏を結びつけた感動の物語でもある。

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