ガリレオX

脱炭素社会へのイノベーション 電力供給の新たな取り組み

BSフジ
本放送:08月22日(日)昼11:30~12:00
再放送:08月29日(日)昼11:30~12:00

 今や世界共通の課題である脱炭素社会の実現に向けて、昨年日本は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標を打ち立てた。この野心的な目標を達成するためにはどのような取組みが求められるのか? その鍵を握っているのが、電源の低炭素化だ。そのためには、ゼロエミッション電源である再エネの主力電源化や原発の再稼働に加え、既存の火力発電における低炭素化技術の開発やCO₂排出削減を図った新技術の開発、さらに再生可能エネルギーの大量導入を可能にするイノベーションの実現が不可欠だ。そうした取組みを多角的にレポートし、目指すべき脱炭素社会実現の行方を探っていく。

「2050年 カーボンニュートラル」へ
 2020年10月、日本は2050年までに温室効果ガスであるCO2の排出を実質ゼロにすることを表明した。これまで掲げられていた目標をさらに上回るこの“カーボンニュートラル”を達成するために、欠かすことのできない取り組みと考えられているのが「電化」だ。これは今まで化石燃料等が用いられていたエネルギー源を電気に置き換えることで、CO2の排出が抑えられるという考え方である。そしてまた、この電化を推進するために電気の供給側でもCO2の排出削減が求められているのだ。

再生可能エネルギーの拡大と課題
 電力供給側での脱炭素への取り組みとして、まず挙げられるのが、太陽光発電等の再生可能エネルギーの拡大だ。仙台太陽光発電所は2012年に運転を開始した総出力2,000kWの太陽光発電所だ。東北電力では、今後、東北・新潟エリアに200万kWの再生可能エネルギーの開発を目指しているという。このような再生可能エネルギーが日本各地で広がりを見せているものの、根本的に再生可能エネルギーの弱点である天候などの自然条件によって生じる発電量の揺らぎを調整しなければならないという課題がある。指摘されている。そこで西仙台変電所に設置された大型の蓄電池では、電気が余っている時には電池に充電して、少なくなったら出力する、という電力の需給バランス調整の実証実験が行われていた。
 また、別の脱炭素エネルギーとして期待されている“水素”の製造でも、再生可能エネルギーを組み込んで実証実験が進められている。

最新の火力(石炭)発電
  現在国内の総発電量の約76%を占める火力発電でも低炭素が求められている。広島県の竹原火力発電所は2020年に古い設備を立て替える形で新たに最新鋭の発電設備を運転開始した。「超超臨界圧」という日本独自の技術を投入したこの発電所では、世界最高水準の発電効率を実現し、CO2排出量を大幅に削減することができたという。また宮城県の勿来IGCC発電所では、石炭を一度ガス化し、そのガスを燃焼させることによる発電と、その排熱で蒸気タービンを回すという2段階の発電によって高効率化を実現していた。また、電力中央研究所では石炭とアンモニアを混焼することで低炭素を実現しようという研究が行われていた。

CO2を再利用する?
 火力発電所では、その効率が向上しても排出されるCO2が全くなくなるということはない。また火力発電は発電量をコントロールしやすいという特性上、日本ではその需要はまだまだ高く留まっており、可能な限り排出を減らしたCO2を何らかの方法で相殺する方法が模索されている。
広島県の大崎クールジェンでは、石炭を燃焼させる前にガス化し、あらかじめCO2を抽出する方法を研究している。また、新潟県にあるINPEXの天然ガス精製プラントでは、発電時に回収されたCO2と水素を反応させることで、都市ガスの原料と同じメタンを精製する“メタネーション”の研究も進んでいた。
このようなカーボンニュートラルに向けた技術革新の取り組みが進められえる一方、再生可能エネルギーとともに発電時にCO2を出さない原子力発電の活用も2050年のカーボンニュートラルに向けて必要不可欠であるという。


主な取材先
福島水素エネルギー研究フィールド
勿来IGCC発電所
大崎クールジェン
竹原火力発電所
仙台太陽光発電所
西仙台変電所 大型蓄電池システム
INPEX 長岡鉱場
電力中央研究所
山本 隆三さん(常葉大学)
金田 武司さん(ユニバーサルエネルギー研究所)
松本 真由美さん(東京大学)

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