盗む能力を持つ生物たち
自然界には様々な特殊能力を持った生物たちがいる。身体が切られても再生する能力や、若返りの能力を持つ生物などもいる。そんな特殊な能力の中で現在、注目されているのが「盗む」という能力だ。盗むといえば、他の生物の獲物などを横取りするイメージだが、そうではなく他の生物がもつ能力や性質そのものを盗むという。そしてあたかも自分の能力かのように利用するのだ。
光合成に必要な葉緑体を盗むウミウシ
「海の宝石」という別名を持つウミウシ。多彩な色や形を持つ多種多様なウミウシだが、実は様々なものを盗む、「盗みのスペシャリスト」でもあるのだ。そんなウミウシの盗む行動の中で特に注目されるのが、植物が光合成のために利用する葉緑体を盗むという行動だ。ウミウシにとって葉緑体を盗むことがどのような意味を持つのか?ウミウシを研究する奈良女子大学の遊佐陽一教授の研究室を訪ねた。
光る能力を盗む生物
海に暮す「ウミホタル」というプランクトンがいる。ウミホタルは発光する生物で体内に蓄積させた発光物質を化学反応させることで光る。そんなウミウシの光る能力を盗む生物がいることが、最新研究によって明らかになってきた。研究を進める中部大学の大場裕一教授は、その光る能力を盗む行動を研究する中で世界初となる不思議な現象を見つけ出した。それは他の生物が持つタンパク質の性質をそのまま自分に取り込むという常識を越えた現象だった。
遺伝子を盗む生物がいる?!
様々な盗む生物がいる中で、近年の研究によって他の生物が持つ遺伝子を盗んでいるのではないかと指摘される生物がいる。他の生物が持つ遺伝子を自らの遺伝子に取り込み受け継ぐことを水平伝播と呼ぶ。そしてこの水平伝播によって得られた遺伝子の割合が非常に高いワムシの仲間が見つかっている。はたしてそのワムシの仲間は意図的に遺伝子を盗んでいるのだろうか?ワムシ研究者である長崎大学の萩原篤志教授に伺った。
主な取材先
萩原 篤志さん(長崎大学)
大場 裕一さん(中部大学)
遊佐 陽一さん(奈良女子大学)
横浜・八景島シーパラダイス
葛西臨海水族園
海遊館