ガリレオX

太陽フレアの脅威 被害に備えるための予測技術

BSフジ
本放送:09月11日(日)昼11:30~12:00
再放送:09月18日(日)昼12:30~13:00

 母なる星・太陽。地球上の生命は太陽から得られるエネルギーによって繁栄してきた。そんな太陽の活動が、私たち人類の文明社会に多大な影響を与える可能性があると注目されている。それは太陽表面で起こる巨大爆発「太陽フレア」だ。100 年に1度とも言われる巨大な太陽フレアが発生した場合、携帯電話の通信障害や、大規模停電など、私たちの社会インフラが大打撃を受ける可能性があるというのだ。  なぜ太陽で爆発が起こるのか?そして文明社会はどのような影響を受けてしまうのか?激しく変化を続ける太陽の真の姿とその脅威に迫る。

2025年に懸念される太陽フレアの発生
 地球に光と熱をもたらす太陽。その膨大なエネルギーで地球上の生命は繁栄してきた。近年、人工衛星の観測によって明らかになってきたのは、表面が激しく変化し活発に活動する太陽の姿だった。
 そんな太陽の活動は11年の周期で活動期と静穏期を繰り返していることがわかっている。そのため2025年頃、太陽活動が活発期を迎える事が予測されていた。そしてこの太陽の活発期に発生が懸念されていたのが、太陽表面で起こる大爆発。太陽フレアという現象だった。

地球上の社会システムに障害をもたらす太陽フレアの脅威
 太陽フレアの放出するエネルギーは水素爆弾の1億倍とも言われる。国立天文台で太陽の研究を続ける花岡さんは、太陽フレアが発生した時に放出される高エネルギーの物質が地球上に大きな被害をもたらす可能性があると警告する。「たまたま地球の方に来るとハイテクになってる社会に対して非常に大きな影響を及ぼすんですね。」
 2022年6月。100年に一度とも言われる巨大フレアが起こった場合の最悪の被害想定が国によってまとめられた。想定される被害は携帯電話などの電波通信の障害や大規模停電など、現代の社会に不可欠な様々なシステムに障害をもたらすものだった。アメリカでは観測史上最大クラスの太陽フレアが発生した場合、その被害想定額は100兆円以上とも試算されている。花岡さんは壊滅的な被害をもたらすような巨大フレアが、実際に過去発生していたという。「今までわかってる中で1番大きいフレアっていうのは実は19世紀の起きたフレアで、そういうものはいつ起こっても不思議ではないんですね。」

過去の記録から明らかになった想定を超える巨大フレア
 19世紀に観測史上最大の巨大フレアが目撃されている。目撃者であるイギリスの天文学者、リチャード・キャリントンは、その巨大爆発の威力をもの語るスケッチを現代に残していた。そのスケッチから推定されるフレアの規模は、20世紀~21世紀に起こった最大のフレアの数倍という非常に大きなものだった。
 さらに樹木の年輪に残された過去の記録からは、19世紀の巨大フレアより約10倍も大きな巨大フレアが発生した痕跡も見つかっている。太陽研究者である名古屋大学の草野さんは、その巨大フレアが現実に発生した場合、地球上の社会システムは大打撃を受ける可能性があるという。「現代社会のですね基盤となるようないろんなシステムが惑星規模で長期間失われてしまうということに繋がってくるだろうと推測しています。」

太陽フレアの影響に備える宇宙天気予報
 太陽フレアの発生は防ぐ事はできない。そのためその被害を防ぐために求められるのは、太陽フレアの発生やその影響を精密に予測する研究だ。情報通信研究機構では、巨大太陽フレアの被害に備えるための宇宙天気予報という取り組みを進めていた。宇宙天気予報では専門家による検討が毎日行なわれており、検討された予測結果はホームページ公開されるとともに太陽フレアの影響を受ける様々な事業者へメールで配信されている。
 そんな宇宙天気予報で、新たな挑戦が進められていた。予測グループのリーダーを務める久保さんはその挑戦は、より高精度な太陽フレアの予測技術の実用化だという。「数時間先までに太陽フレアが発生しますよという、もう警報的なことをですね。が実際にできるというふうに考えています。」

世界初!太陽フレアの発生時期・位置・規模を正確に予測する技術
 宇宙天気予報で実用化が期待される新たな予測技術を開発したのが、名古屋大学の草野さんだ。草野さんは太陽フレアが発生するメカニズムを詳しく検討することで、その予測技術を確立した。そしてその技術の確立は太陽フレアを正確に予測する手法として世界初の快挙だった。「約半日から1日前ですね。かなり正確な予報を出すことができるだろうというふうに考えていま す。」
 果たして新たな予測技術とはどのようなものなのか?そしてその有効性とは?太陽フレアの被害に備えるための最新研究に迫る。


主な取材先
花岡 庸一郎さん(国立天文台)
久保 勇樹さん(情報通信研究機構)
草野 完也さん(名古屋大学)

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