ガリレオX

消えた“反物質”の謎 私たちはなぜ存在しているのか?

BSフジ
本放送:02月12日(日)昼11:30~12:00
再放送:02月19日(日)昼11:30~12:00

宇宙の成り立ちに関わる最大の謎がある。現在の宇宙はすべて“物質” で出来ていて、“反物質”がどこにも見当たらないのは何故かという問題である。物質と同じ数だけ生まれたはずの反物質が存在しない理由が説明できないと言うのだ。 今、この反物質の行方を探る研究が進められている。それは「宇宙の始まりに何が起きたのか」を解き明かす試みであり、さらに「私たちはなぜ存在しているのか」という私たち自身のルーツを探る旅でもある。 “反物質”とは何なのか?“反物質”はどこへ行ってしまったのか? 反物質の謎をめぐる“知”と“ロマン”に迫る。

“反物質”はどこへ行った?
“反物質”は“物質”を鏡に映したような存在である。宇宙が誕生した時、大量の物質と反物質が同じ数だけ生まれたと考えられている。そして物質と反物質は出会うと対消滅して消えてしまうので、大量に生まれた物質と反物質はやがて消滅して、いずれは空っぽの宇宙になるはずだった。しかし実際は物質だけが残り、現在の宇宙が形作られた。研究者たちはその理由として、初期の宇宙で物質と反物質のバランスが少しだけ崩れるという現象が起きたからだと考えている。そしてそのバランスの崩れは、反物質のたった10億分の1が物質に変わるということによって起きたと言う。
では何故そんなことが起きたのか?その謎を解く鍵はニュートリノと呼ばれる素粒子にあった。

“物質”と“反物質”は入れ替わることができるのか?
物質と反物質のバランスが崩れるためには、物質と反物質がお互いに入れ替わることができなければならない。実は、ニュートリノにはそんな現象を起こす可能性があると言う。果たしてニュートリノとその反粒子である反ニュートリノは本当に入れ替わることができるのか?それを確かめる実験が、岐阜県神岡町の地中1000mで行われている。東北大学ニュートリノ科学研究センターが進めている「カムランド禅」と呼ばれる実験である。
いったいどんな実験なのか?現在どのような成果が得られているのか?

“物質”と“反物質”は鏡の世界ではない?
もし、物質と反物質が入れ替わることができるとしても、それだけでは、物質だけが残った理由が説明できない。物質が反物質に変化して反物質が残ることもあり得るからだ。変化が一方にしか起きないためには、物質と反物質の間に何か本質的な違いがあるはずだ。そんな仮説を確かめようという実験が行われている。
その一つが、茨城県東海村のJ-PARCからニュートリノを発射し、それを岐阜県神岡町にあるスーパーカミオカンデで検出するという大規模な実験「T2K」である。この実験では昨年8月に、ニュートリノと反ニュートリノの間に性質の違いがある可能性を示唆する実験結果が報告された。「T2K」とはどのような実験なのか?報告された結果の意味とは?

実際に生成された反物質「反水素」
スイスにある欧州合同原子核研究機構 通称CERNでは、なんと水素の反物質である“反水素”を人工的に合成し、反物質の謎に迫る様々な研究が進められている。
日本の研究チームは、反水素を特殊な磁場の中で生成して長い時間保持することに成功し、現在は、反水素原子をビームにして磁場の外に取り出す研究を行っている。研究の目的は反水素原子の性質を精密に測定して、水素原子の性質と比較することだと言う。反水素と水素に違いが見つかれば、宇宙がなぜ物質だけで出来ているのかが解るかもしれないと言うのだ。
「消えた反物質の謎」が、今、少しずつ解き明かされようとしている。


主な取材先
村山 斉 さん (カブリ数物連携宇宙研究機構)
井上 邦雄 さん (東北大学 ニュートリノ科学研究センター)
中平 武 さん (KEK 素粒子原子核研究所/J-PARCセンター)
山崎 泰規 さん (理化学研究所)

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