ガリレオX

都市鉱山が未来をつくる 資源循環テクノロジーの現場から

BSフジ
本放送:04月22日(日)昼13:35~14:05
再放送:04月29日(日)昼11:30~12:00

2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメダルは全てリサイクル原料で作ることが決まっている。その原料となるのは、使用済みの小型家電やパソコン、携帯電話に眠る金、銀、銅!これらは都市鉱山と呼ばれ、回収が呼びかけられている。高度な金属濃縮技術と高精度な分析技術により、天然鉱山からの採取と同等か、或いはそれ以上の量の金属を都市鉱山から取り出すことも可能になってきた。さらに今後の電気自動車の普及により廃棄量の増大が予測されるリチウムイオン電池から、コバルトなどのレアメタルを回収する新しい技術も開発されている。国際的な資源循環型社会を築くために一層の進歩が必要とされる注目技術の、最先端の現場を紹介する。

都市鉱山からメダル作り
 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックで選手に授与される金・銀・銅メダルは、使用済みとなり回収された携帯電話や廃小型家電に眠る金属、いわゆる「都市鉱山」から作られる予定だ。電子機器の廃棄物、いわゆる電子ごみは、国連大学などの報告書によると2016年に発生した量は4470万トンにもおよぶ。これはスカイツリー1000塔とほぼ同じ重量で、地球規模でその再利用が喫緊の課題となっているものだ。東京オリンピック・パラリンピックにおいて、全部で5000個以上作られるメダルに必要な金属は、金・銀・銅あわせて約8トン。100%都市鉱山からのメダル作りは史上初の試みだ。集められた使用済み携帯電話からどのようなプロセスで貴金属を取り出すのか、北九州にある携帯電話リサイクル工場にカメラが入った。

資源循環テクノロジーの現場から
 都市鉱山リサイクル事業を手がけるJX金属の工場を訪ねた。都市鉱山から回収できる有用な金属とは、金・銀・パラジウムなどの貴金属、そしてニッケル、タンタル、インジウムなどのレアメタルなど多岐にわたる。リサイクルにおいてまず大切なことは、回収された電子ごみを破砕し、鉄やアルミ、金、銀、銅といった金属とプラスチックとに選別することだという。意外にも、製品に含まれる有用な金属の量は年々減少していると言うが、それは新製品で小型軽量化とコストダウンがはかられ、使用する金属の量が抑えられているおかげでもある。だからこそ都市鉱山資源を経済プロセスにきちんと取り込み、循環させることが必要となる。そこで求められるのが、さまざまな種類の電子ごみの価格を決め、流通させるための高精度な分析技術だ。最先端の分析技術をもつ工場を取材した。

都市鉱山リサイクルの課題
 天然の鉱山に比べても蓄積している資源の量ではひけをとらないとされる都市鉱山。その資源を有効に循環させる為にはまだ課題があると語るのは早稲田大学の所千晴教授だ。ひとつは、古くなった携帯電話など、個人個人の手元に分散している資源をどのように回収し誰がリサイクルしていくのか、経済コストと再資源化とのバランスが悪いという問題。そしてもうひとつは、今のところ貴金属やレアメタルといった金属のリサイクルにばかり注目しているという点だ。所教授が提唱するのは、回収された電子機器、例えばスマートフォンを貴金属・レアメタル・プラスチックという素材で選別するのではなく、小型で高性能なカメラやマイクといった部品単位で、かつその機能を破壊することなく分解し、その機能を再利用する“リユース”という考え方だ。そのための新技術も研究が進んでいる。

電気自動車が生み出す都市鉱山
 これからの都市鉱山の鉱脈として最も期待されているものの一つにリチウムイオン電池がある。身近なスマートフォンやパソコン、そして電気自動車での需要の増加とともに、廃棄されるリチウムイオン電池の急増も予測されているからだ。そのリチウムイオン電池からニッケル、コバルト、リチウムといったレアメタルを回収することができれば、環境負荷の低い社会を築いていくことができる。特にコバルトは産地の偏在と安定供給の面での不安から、リサイクルが最重要視されているレアメタルだ。取材したパイロットプラントでは、難しいとされていた炭酸リチウムの抽出にも成功していた。これからは技術を単に進歩させるだけでなく、貴重な金属を含んだ電子ごみを無駄にしないリサイクル技術の開発も進める「資源循環型社会」への転換が必要となる。


主な取材先
所 千晴さん (早稲田大学)
古宮 正章さん(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)
熊谷 謙さん(NTTドコモ)
大髙 禎夫さん(JX金属)
市川 恵一郎さん(JX金属)
波多野 和浩さん(JX金属敦賀リサイクル)
日本環境設計

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