能取湖に広がるアマモ場
北海道東部、日本最北端の刑務所があることでも有名な網走市。ここにはオホーツク海と繋がる能取湖という湖がある。そんな能取湖にはアマモと呼ばれる海草が群生するアマモ場が広がっている。
アマモ場は海のゆりかごと呼ばれ、様々な生物の繁殖場所や住処にもなっているという。そんなアマモ場は人間にも恩恵を与えるというがどういうことなのだろうか。
幻のエビ、ホッカイエビの減少
そんな能取湖のアマモ場には幻のエビと呼ばれるホッカイエビが生息している。商品名「北海シマエビ」として流通する高級食材で重要な海産資源として重宝されている。
しかしこのホッカイエビが年々、漁獲量減少の危機にさらされていた。その減少を食い止めるため、現在ホッカイエビの生態の研究が進められている。その研究からはホッカイエビとアマモ場の密接な関係が見えてきた。実はホッカイエビはアマモ場がなければ生きてはいけないのだ。
アマモ場の生態系サービスをさぐる
生態系は様々な機能を持っており、人間が生態系から受けるその恩恵のことを生態系サービスという。アマモ場が私たちにもたらす恩恵の1つが、ホッカイエビを育て、海産資源として供給することだ。これをアマモ場の供給サービスという。
2024の7月、能取湖でアマモ場の供給サービスを調べる調査が始まった。 アマモ場があることによって、どれくらいのホッカイエビが得られるのかをさぐるこの調査では、さらにその恩恵を金額という具体的な数値で示す事を目指していた。
アマモ場とホッカイエビの関係に迫る2つの調査
北海道大学と東京農業大学が進める今回の共同調査では、能取湖のアマモ場の分布調査と、ホッカイエビの漁獲調査が行なわれる。そしてこの2つの調査からアマモ場の供給サービスを試算するという。
まず行なわれたのはアマモ場の分布を調べる調査。調査で重視されたのはアマモ場の立体的な構造だ。アマモ場といってもその高さは多様である。そんな立体的な分布を知るために独自の手法の調査が進められた。
もう1つの調査では、実際にホッカイエビを採集して個体数を調べる。エビカゴという漁具を用いるこの調査から見えてきたのは、ホッカイエビの意外な習性だった。
世界初!立体的、かつ空間的にアマモ場の供給サービスを試算
これらの2つの調査の結果、能取湖のアマモ場の供給サービスが試算された。それはアマモ場があることによって、私たちはどれくらいのホッカイエビが得られるのかを具体的な金額で示す事でもある。
このようにアマモ場を立体的に調べ、かつ空間的に恩恵を試算したことは世界初の快挙なのだそうだ。では実際にその金額とはどれくらいなのだろうか?
主な取材先
【主な取材先】
宮下 和士さん(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター)
千葉 晋さん(東京農業大学生物産業学部)
伊藤 慶造さん(北海道大学大学院)
松本 裕幸さん(東京農業大学大学院)
山本 正樹さん(漁師)
山田 剛弘さん(料理人)