アレルギーとはなんなのか?
私たちの体には体内に侵入した異物を排除する“免疫”があり、この免疫が特定の原因物質(アレルゲン)によって過剰に反応してしまうのが『アレルギー』だ。このアレルギーは環境汚染や食生活の変化等、人間社会の発展に伴って現在増加傾向にあるとされており、特に喘息やアトピー性皮膚炎の患者数が如実に増加しているという。
食べ物のアレルギー/食物アレルギー
食物アレルギーは特定の食物を食べたり、接触することで起きるアレルギーだ。食物アレルギーの対象は、よく知られているものに卵や小麦、乳製品などがあるが、珍しい例ではカフェインや納豆、スパイスなど、ありとあらゆるものがアレルゲンとなってしまう。食物アレルギーは小児の患者では成長と共に寛解することも稀ではないものの、成長しても症状が改善されない場合には誤食等によるショックを和らげるための「経口免疫療法」という「少しずつ食べて、体にアレルゲンを慣らす」治療法も登場している。
花粉によるアレルギー/花粉症
日本におけるアレルギー疾患の中で、圧倒的な患者数を誇るのが花粉症だ。その総数は3,000万人とも推定されており、花粉症による不快な症状がもたらす経済損失は5兆円にのぼるとも言われているが、花粉症もまた根治させる方法は見つかっていない。しかし、その症状自体を出にくくする治療法が登場している。その一つが『舌下免疫療法』だ。なんとこの治療法によって、アレルギーを引き起こす細胞が、その働きを抑える細胞に変化するとのことだが、その効き目はどうなのだろうか?
肌のアレルギー疾患/アトピー性皮膚炎
肌への刺激に対して、過剰に反応してしまうのがアトピー性皮膚炎だ。アトピー性皮膚炎の患者は、肌に備わっている、外部からの異物の侵入を阻む “バリア機能“にトラブルが生じているため、肌から異物が侵入してしまう。これよって異物は肌の中でアレルギー反応を引き起こし、生じた痒みで患部を掻くことでさらにバリア機能が脆弱になる、という悪循環を抱えているのだ。
このアトピー性皮膚炎を改善させるための研究が進められている。順天堂大学のフランソワさんは、アトピー性皮膚炎の患者の肌で「オートファジー」と呼ばれる体内のタンパク質をリサイクルする機能が抑制されていることを発見し、この機能を回復させると共に、バリア機能を向上させる物質を発見した。また、九州大学の津田さんは、アトピー性皮膚炎のマウスが通常のマウスと比べて同じ刺激でもより痒く感じていることを発見し、脳が感じる痒みを増幅させない方法を研究している。
アレルギーを抑え込み、治すことができるようになる未来に向かって進む、研究の最前線に迫る。
主な取材先
佐藤さくらさん (相模原病院 臨床研究センター)
飯沼 智久さん (千葉大学)
ニヨンサバ・フランソワさん (順天堂大学)
津田 誠さん (九州大学)