脳波から機械を動かす最新技術
考えるだけで様々な装置を動かことが可能になる技術”ブレイン・マシン・インターフェース“。その技術の活用が期待されるのが医療の分野だ。
大阪大学ではその技術を用いて、例えば、全身の運動まひが段々と進行し、最終的に手や足、そして口も動かせなくなるALSという難病の障がいを軽減しようとする取り組みが進んでいる。
考えただけで動くロボットアームや、考えただけで文字が入力され、本人の代わりにアバターで会話するシステムの開発が行われているが、このブレイン・マシン・インターフェースで最も重要となるのが、脳から発生する微弱な電気信号である“脳波”を正確に読み取ることだという。いったい脳波をどのようにして読み取るのだろうか?そして、そこからどのようにして様々な装置を動かすのだろうか?
思い浮かべた音声を出力
頭の中で“思い浮かべた音”を脳波から読み取り、“実際の音”として出力する研究が東京工業大学で進んでいる。
実験では、「あ」と「い」の音声を被験者に聞いてもらい、その時の脳波の変化から聞いた音声が明瞭な音として再構成された。今回の番組では、その実験の様子を取材。脳波から再構成された音声とは?
またその技術を発展させ、聞いた音声を“思い出した”時の脳波の変化からその音声を再構成する技術の研究も進んでいる。未だ、脳の中で個人個人の声がどのように処理されているのか全貌は明らかになっていないが、この研究によって脳の機能の解明が進み、さらにイメージされた音声がそのまま出力される装置が開発されるかもしれない。
脳の中で起こる精神的な変化を可視化するシステム
緊張や興奮など、精神的な高まりを可視化する技術の開発も進んでいる。その1つが”脳波VRライブ”と名付けられたシステムだ。
芝浦工業大学では、仮想空間で行われているライブパフォーマンスに、視聴者の興奮などに応じて視覚的なエフェクトを表示するというシステムの開発が進んでいる。このシステムは開発当初、手拍子や声掛けができない視聴者でも、ライブの盛り上がりに合わせて視覚的なエフェクトを表示することで“ライブに参加している”という一体感を感じられるようにすることが目的だった。そんな中、コロナ禍によりオンラインライブも増加。現在は、離れた場所からライブを視聴する人でもライブの一体感を感じられるシステムの構築を目指し研究が行われている。
また、このような精神的な変化を可視化する技術を、より身近な日常生活で活用するためのシステムの開発も進められている。
主な取材先
平田 雅之さん(大阪大学)
吉村 奈津江さん(東京工業大学)
堀江 亮太さん(芝浦工業大学)