死の認識と人類
多くの生き物が必ず直面する“死”。人類が他の動物と異なるのは、太古の昔から死について考え、死を理解しようとしてきたことだ。その証左のひとつに、ネアンデルタール人が死者に花を飾る埋葬を行っていたという説がある。放送大学・一橋大学名誉教授の内堀基光さんは、「我々が死として問題にしているのは、結局は死者の問題である。」と語るが、これまでの人類は、どのように死後の世界を想像し、どう向き合ってきたのだろうか?
死者の声を聞くイタコ
日本には平安時代から「口寄せ巫女」という存在があり、カミサマや、死んだ人間の魂をみずからの身体に憑依させて死者の言葉を伝えてきた。そのような口寄せ巫女のうちで、現在も残っているのが青森県を中心に活動するイタコである。國學院大學助教の大道晴香さんによれば、イタコの語りにはある程度の決まった「型」があるが、聞き手がそこに言葉のリアリティを感じるための、ある仕組みが含まれているという。全盲のイタコ、中村タケさんによる実際の口寄せの記録映像を通して、イタコが伝える死者の声の不思議に迫る。
不老不死の実現⁉意識のアップロード
古今東西、人間は不老不死の技術を必死になって追い求めてきたが、これからの科学技術によって、人間はいずれ死ななくなるという技術予測もある。東京大学大学院准教授の渡辺正峰さんは、「死なない世界を実現しようと思っている」と語る。渡辺さんが具体的に進めているのは、人間の意識を機械の中にアップロードするという研究だ。果たして、人の意識をそのまま機械に宿らせることはできるのだろうか?そしてこの研究により不老不死は実現するのだろうか?
主な取材先
内堀基光さん(放送大学・一橋大学 名誉教授)
大道晴香さん(國學院大學 助教)
渡辺正峰さん(東京大学大学院 准教授)