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自然に還る!驚異の材料革命 循環型社会の実現に貢献する生分解テクノロジー

BSフジ
本放送:11月26日(日)朝08:28~08:58
再放送:12月03日(日)朝08:28~08:58

私たち人類は、大量生産・大量消費により豊かで便利な社会を築いた一方で、廃棄物による環境破壊などの問題も生み出した。そうした問題を解決する取り組みの一つとして、今、進められているのが“生分解性材料”の開発だ。生分解とは、微生物によって水と二酸化炭素に分解される性質のこと。そんな特性を持つ生分解性プラスチックの開発や、木の成分であるセルロースやリグニンを活用した生分解性材料の開発など、様々な研究が進められている。  これからの循環型社会に欠かすことができない生分解材料研究の最前線と可能性に迫る。

期待が集まる生分解性材料
地球の約7割を占める海。近年、そこで大きな問題が起きている。それは、適切に処理されなかったゴミによる海洋汚染だ。そのゴミの中でもプラスチックゴミは、自然環境では分解されずに残り続け、特に、マイクロプラスチックと呼ばれる微小なプラスチックは生物が飲み込んでしまうなど、生態系を含めた海洋環境への影響が懸念されている。
いま、そうした問題を解決するため、環境に配慮した技術の開発が進められている。
 そうした取り組みの一つが生分解性材料の研究開発だ。生分解性材料とは、微生物によって水と二酸化炭素に分解される材料のこと。使い終わったあと分解されるため、環境中にゴミとして残らない。そんな生分解性材料の研究から新たに生分解性プラスチックが開発された。それは、水に触れると分解が始まり、最終的にあらゆる環境で水と二酸化炭素までに分解される生分解性プラスチックだ。

樹木の成分を原料にした新しい生分解性材料“改質リグニン
 別の生分解性材料の開発も進んでいる。その材料の原料は樹木に含まれる成分の一つ、リグニンだ。リグニンは樹木の強度を高める役割を担う。強度もあり生分解性も持つリグニンを活用して新しい材料を開発しようという取り組みが進められていたが、これまでなかなか実現はしなかった。しかし、ある研究によって従来の課題を解決し、リグニンから新しい材料が開発された。その新材料は、プラスチックのように使うことができ、さらに別の物質と混ぜると、材料の強度をより高めることができるという。そしてそれだけでなく、リグニンの生分解性により、材料のリサイクルも容易にすることができるという。

樹木の成分を原料にした生分解性を持つ製品も登場
樹木に含まれるもう一つの成分、セルロースの活用した生分解性を持つ製品も登場している。開発されたのは、セルロース100%の不織布だ。不織布は、ウェットティッシュや衣類、ろ過フィルターなど、多岐に渡り用いられているが、今回開発された不織布は、生分解性を持ち、尚且つ、他のセルロース100%の不織布よりも柔らかさと吸水性に優れるのが特徴だという。また、製造工程にも環境負荷を低減させる工夫が施され、不織布の製造から製品が使い終わったあとまで、環境に配慮した製品づくりが進められている。


セルロースを活用した生分解性を持つ新しい製品
 セルロースを活用した新しい製品の開発も進んでいる。それは、セルロースを極小の球状に加工したセルロースビーズだ。想定している使用用途は、ファンデーションなどの化粧品だという。これまで化粧品や洗顔料には、マイクロプラスチックが配合されているものがあった。しかし、そのようなマイクロプラスチックは環境配慮の観点から、世界各国で使用の規制が進められている。そんなマイクロプラスチックに代わる材料をセルロースで作ることで、自然環境で分解され、海洋汚染の原因にならないようにしようというのだ。

環境に配慮した材料で作る 土に還る電子デバイス
 樹木は、セルロースで繊維を作り、自身の体を支えている。そのセルロースの繊維をさらに細かくしたセルロースナノファイバーと呼ばれる先進材料の活用研究が進んでいる。その一つが、セルロースナノファイバーを電子デバイスの基板として活用する研究だ。その研究から土に含まれる水分量を測る、土壌含水率センサが開発された。センサに使われている材料はすべて環境に配慮した材料。そのため、なんと使い終わったセンサは分解されて土に還るという。
 これからの循環型社会の実現に欠かすことのできない生分解テクノロジーの最前線を探る。


主な取材先
岩田 忠久さん (東京大学)
山田 竜彦さん (森林総合研究所)
春日 貴章さん (大阪大学)
フタムラ化学株式会社

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