ガリレオX

運を理解したい!社会心理学・確率論・統計学で迫る運の本質

BSフジ
本放送:02月26日(日)昼11:30~12:00
再放送:03月06日(月)昼11:30~12:00

ここぞという時に成功する人、実力を示す人のことを「あの人は持ってるなぁ!」と、私たちは驚きをこめて表現する。 この場合持っているとされるのは、生まれながらの運であったり、物質のように貯めてある運であったり、ツキと呼ばれる成功の連続であったりと、解釈が様々だ。「運」とはなにか?非科学もオカルトも混在する「運」概念は「あくまで個人的な感想」すぎて、科学では扱いづらそうにみえる。だがそうした「主観」と社会との関わり研究を得意とするのが社会心理学だ。運の認識には「しろうと信念」という認知バイアスに近いものが働いているという。また数学の分野では、「運」に見える現象 をたくさん調べ、その結果を集計してわかりや すくまとめる統計学がある。 さらに「運」に見える現象がどれだけ起こりやすいのか、数学的に追及したのが「確率論」だ。ガリレオもケプラーもパスカルもフェルマーも、皆サイコロを振った。運を理解したい。社会心理学と確率論と統計学からその本質にせまる。

運とはなにか?社会心理学は分析する
 「あと一回やればきっと勝てる」ギャンブル好きの友人によるそんな諦めの悪いセリフを聞くと、そんな都合の良い偶然があるわけないだろうと思ってしまう。ギャンブルに無縁な人でも、毎日が運や偶然と共にあることに変わりはない。社会心理学を専門とする村上幸史さんは、運についての考え方は「しろうと理論」という、個人的な信念に近い認知バイアスに影響を受けているという。例えばそれは、クジ運や雨男など、運の強弱に個人差があることを肯定するものや、「ツイている・ツイていない」など偶然の状況を説明するもの、運を道徳的な要因と結びつけて考えるものなど多岐にわたる。社会心理学から、総じて運とは「社会的な要因と強く結びついた主観」によって説明ができると言う。


運を理解したい!数式なしでの確率論
 主観に強い影響を受ける「運」であるが、その運がどう出るかが大問題となるギャンブルでは、確率論の出番となる。横浜国立大学で確率論を専門とする今野紀雄教授によると、例えば宝くじの場合、私たちは「どうせ当たらないだろう」と見積もり、実際に当たる確率は低く、だからこそ当たると「運が良い」と認識するのだと言う。そして興味深いことに、「運が良いと感じる直感」と「実際の確率の高低」との間には、図形の錯覚である錯視のように、確率を錯覚する現象「錯確率事象」が生じると言うのだ。コイン投げの表裏による簡単なギャンブルを例に、詳しく話を聞いた。


分岐する世界線!ベイズ統計で運にせまる
 「運」に思われる現象が、過去にどんな確率で起きたのかを検証し、それが未来に起こる確率を考えたいとき、統計学は強い武器になる。帝京大学で統計学を専門とする小島寛之教授によると、特にベイズ統計学という流派が現在主流となっていると言う。ベイズ統計学は、過去のデータが皆無な現象であっても、個人的な予想をもとに「主観確率」を事前設定し、情報が追加されるたびに計算を更新してより確度の高い事後確率をはじきだすことができる。例えばバレンタインに、意中の異性からチョコレートをもらったとき「このバレンタインチョコレートはきっと本命に違いない」という主観的な思い込みを、ベイズ統計は事前確率として取り込むことができるのだ。ベイズ統計学はこれから起こる出来事を、いわば分岐していく複数の世界線ととらえ、未知の確率を数値化していくという意味で、「運」について数学的に追求する手段だと言えるのだ。


主な取材先
今野紀雄さん(横浜国立大学 大学院工学研究院)
小島寛之さん(帝京大学)
村上幸史さん(社会心理学研究者)

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