階層的な構造を持つ宇宙の姿
宇宙はどのような姿をしているのか?星々が作り出す宇宙の構造を知るため、国立天文台の小久保さんに「Mitaka」というソフトウェアで見せてもらうと、驚きの姿が見えてきた。実は私たちの暮らす太陽系も「銀河」という大きな構造の中にあり、さらにその銀河も「銀河団」というより大きな構造の中にあるというような階層的な宇宙が広がっていたのだ。宇宙はどのように誕生し、このような構造になったのか。研究者たちはそんな宇宙の進化をさぐっている。
シミュレーション天文学
そんな宇宙の進化を探るために行う研究がシミュレーション天文学だ。東京大学の吉田さんは、「シミュレーションは天文学における模擬実験」だという。天文学では一般的に望遠鏡による観測が行われるが、観測で得られる天体の情報は、まるで写真のように一瞬一瞬の断片的な情報でしかない。シミュレーションを行うことで天体の時間経過や、変化を追うことができるという。そして、実際に行われた宇宙のシミュレーションを見てもらうと、時間変化の中で宇宙の構造が出来上がる様子を見ることができた。
世界最大規模のシミュレーションへの挑戦
シミュレーションによって宇宙をさぐる研究には大きな課題があった。それは広い宇宙全体を調べるような大規模なシミュレーションが実現していないということだ。そんな大規模シミュレーションに挑戦した人物が千葉大学の石山さんだ。石山さんは、天文学専門のスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」の全能力を使い、これまでにない広い領域を計算する、大規模なシミュレーションを行った。それによって誕生したのが、コンピュータ上に作られた「世界最大規模の模擬宇宙」だった。
シミュレーションはどのように活用されるのか
今、最新の望遠鏡を使って宇宙の天体を探る観測の研究分野では、シミュレーションの情報が欠かせない存在になっている。国立天文台で観測の研究を進める泉さんは、広大な宇宙に存在する希少な天体の情報を得るために、大規模なシミュレーションが求められるという。最前線の観測では、地球から130億年も離れた、非常に遠方の宇宙にある銀河が探られている。一体、観測とシミュレーションを組み合わせることで、どのようなことがわかるのだろうか。
主な取材先
小久保 英一郎さん(国立天文台)
吉田 直紀さん(東京大学)
石山 智明さん(千葉大学)
泉 拓磨さん(国立天文台)