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DinoScience恐竜科学博で知る 恐竜たちのリアルな生きざま

BSフジ
本放送:08月08日(日)昼11:30~12:00
再放送:08月15日(日)昼11:30~12:00

 1億6000万年以上という超長期間にわたる恐竜の繁栄と進化は、数億年スケールで起こった惑星・地球の大陸移動に、極めて強い影響を受けた。そのことは古気候学や地球生命科学、さらには機能形態学や個体発生学によって近年わかってきたことだが、あまり知られていない。なぜならこれまで、最新の科学的知見がすぐに一般的な恐竜展に反映されることはなかったからだ。今回番組で取り上げる「DinoScience恐竜科学博 ララミディア大陸の恐竜物語」はその意味で画期的な恐竜展示だ。パンゲア大陸が分裂・移動し、北米大陸が隆起・沈降する過程でできた「ララミディア大陸」に焦点を絞っている。白亜紀後期、そこには、高度で特殊な進化を遂げたトリケラトプスやティラノサウルスといった超メジャー級の恐竜がのし歩き、恐竜時代の終わりを飾る「最後の楽園」だったというのだ。米国のブラックヒルズ地質学研究所と連携した「DinoScience恐竜科学博」に取材し、恐竜科学の最前線に迫る。

恐竜科学博にやってきた!
 これまでにも数多く開かれてきた大人気の恐竜展だが、そのほとんどは分類基準に基づく「図鑑的な」展示に終始してきた。例えば、ティラノサウルスがいて、ステゴサウルスがいて、スピノサウルスがいて、アパトサウルスがいて、プテラノドンがいて、マンモスまでいるような展示だ。だがそれは喩えるなら、動物園でツキノワグマとホッキョクグマとを同じ檻に入れて展示するようなもので、分類上は確かに同じクマ科クマ属だが、生息地域は大きく異なり、同じ祖先から分岐した時代も異なっている。今回の展示は、現代の動物園で主流となっている「環境展示」に近いコンセプトを持っており、恐竜を「実在した生き物」として、その生息環境も含めての表現となっている。

傷だらけのゴルゴサウルス
 展示の中に、とても興味深い骨格標本があった。世界ではじめて脳腫瘍の痕跡が見つかった肉食恐竜ゴルゴサウルスだ。化石を考古学的に調べ上げる古生物病理学という学問分野での成果だ。脳腫瘍はゴルゴサウルスの頭骨にCTスキャンをかけることで、ようやく見つかったのだが、実はこのゴルゴサウルス、全身の各所に、骨折などの多くの怪我を負っていたことが発掘化石からわかっており、それでもそれなりに長く生きたことも判明していた。この展示を企画・監修した恐竜くんこと田中真士氏が、この怪我だらけのゴルゴサウルスの生きざまについて語ってくれた。

恐竜王国ララミディア大陸とは?
 地球はマントル対流によりプレートテクトニクスが起こり、大陸が移動する。恐竜時代は1億6000万年の長きに渡り続いたため、大陸が分裂・移動し、隆起・沈降して形が変わり、それに適応して恐竜も進化した。今回の展示の特徴は、恐竜が絶滅してしまう直前、白亜紀末の200万年間にフォーカスを当て、その時にだけ存在した幻の大陸ララミディアの恐竜たちだけが登場する。ララミディア大陸に絞ることで、ティラノサウルスやトリケラトプスなど、進化の最終型とも言える恐竜たちの生きた世界を、精緻に描き出す構成となっている。東京大学大学院の池田昌之准教授に、ララミディア大陸はどのような気候であったのか、古気候学の話を聞いた。するとララミディア大陸には、ヌマスギが森をなす広大な湿地帯が広がり、ワニやカメなど恐竜以外の生き物で満ちていたという。

奇跡のトリケラトプスの実物化石「レイン」
 DinoScience恐竜科学博の目玉の展示となっているのが、ほぼ完璧な形状を保って発掘されたトリケラトプスの実物化石、その名も「レイン」だ。8割以上の骨が変形や欠損なく見つかった事例は過去にない。さらに驚きなのは、広範囲におよぶ皮膚痕化石も発掘されたことだ。皮膚痕化石とは、湿った地面に恐竜が触れた際についた皮膚の痕が型となり、そこに積もった砂が化石となったものだ。この皮膚痕化石にはトゲとも考えられる痕跡もみつかり、今回特別な3DCGとしても復元された。さらに、アメリカのブラックヒルズ地質学研究所の協力を得て、トリケラトプスの子どもの全身骨格標本が、コンピューターシミュレーションにより作成された。そこでは、大人のレインの全身骨格をモデルにして、最新の個体発生学の知見が用いられたという。

絶滅動物 恐竜の科学的復元のむずかしさ
 映画などで見慣れてしまうと、動く3DCGの恐竜の姿にはそれほど驚かなくなってしまうが、実は絶滅動物の復元ほど難しいものはない。なぜなら、生きている恐竜の本当の姿は、誰にも確かめようがないからだ。そのため、これまでの恐竜の骨格標本の組み上げ方は、想像の範囲を出ず、ありていに言えば、科学的とは言えないものも多かった。名古屋大学博物館講師の藤原慎一さんは、機能形態学を駆使し、生き物の前脚の骨の形とその運動機能との間にある関係があることに気がついた。それは、物理的な力学の話で、それぞれの生き物が得意とする動きの背景には、骨の形に由来するテコの力が働いているというのだ。そして絶滅動物であっても、骨さえあれば、その生き物がどのような運動が得意で、どのような姿勢をとっていたのかなど、生態が見えてくるという。詳しく話を聞いた。


主な取材先
恐竜くん(田中真士さん:サイエンスコミュニケーター)
池田昌之さん(東京大学大学院 古気候学)
藤原慎一さん(名古屋大学博物館 機能形態学)

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