ガリレオX

スマホとネットは私たちをどう変えたのか? 自由なのに不自由になる人間関係

BSフジ
本放送:10月24日(日)昼11:30~12:00
再放送:10月31日(日)昼11:30~12:00

 いま、インターネット無しの生活は想像できるだろうか?さらにスマートフォンも無いコミュニケーションは想像できるだろうか?おそらく世代が若くなるほど、スマホから覗きこむネットとSNSの世界は、現実世界と​ほぼ​等価値なものとして渾然一体となっている。むしろスマホと直結した向こう側の世界の方が大事なコミュニティであり、すでに拡張された身体の一部​なのかもしれない​。covid-19による外出規制により、人と直接会うことが難しくなったことで、私たちはネットを使ったオンラインでのコミュニケーションに頼らざるを得なくなった。そこで主流化しているのが、「選択的な」人間関係だという。ネットを活用して自分にとってコストパフォーマンスの良い人間関係だけを選択していくというものだ。一方、自由度が高くなり、流動性が高まった社会になったにも関わらず人間関係の「同調圧力」が高まっているともいう。同調圧力の強化は特にSNSによってもたらされ、スマホとネット(SNS)は私たちの行動だけでなく、本質的な感性までも変容しつつあるという指摘もある。ネットに常に繋がり、寂しくないはずの私たちだが、いま​なぜ不安と孤立を感じている​のか?スマホによって人間存在の何が​変わって​しまったのか?科学的に考える。

スマホ無しで初めてのソロキャンプ
 2021年現在、私たちは日常的にスマホを使い、話題のニュースやトレンドのチェック、友だち、家族、学校、会社との連絡などに活用し、便利で効率的な生活をしている。そんな中、突然スマホ無しの時間を与えられたら、私たちは耐えることができるのだろうか。デジタルネイティブである20代の番組スタッフに、スマホ無しで初めてのソロキャンプ生活を3日間、体験してもらった。キャンプ場に着き、その晩からもう「何をしていいのかわからない」と話をしており、徐々に心境が変化していく様子を自分で記録する。スマホもネットも無い時間で、彼は何を感じ、考えたのだろうか。

子どもたちがネット無し生活を体験する「オフラインキャンプ」
 年々、子どもたちのネット利用は増加し続け、2020年に大阪で27000人の小・中・高校生を対象に行った調査では、小学1年男子で7割以上、小学校高学年以降は、9割以上も「日常的に」ネットを利用していることが分かった。そんなネットを使いすぎてる小学生~高校生を対象に、スマホやゲームなどのネットに繋がる電子機器を使わない「オフラインキャンプ」が開催されている。6年前からその企画・運営をしているのは、兵庫県立大学准教授の竹内和雄さんだ。4泊5日のオフラインキャンプでは、カヌーや釣り、料理やキャンプファイヤーをして過ごすのだが、1日1時間だけネットとデバイスを使ってよい時間を設けている。皆のところを離れてネットを利用しに行くかどうか、子どもたちに葛藤させ、本当にネットが必要なのか考えさせることが目的の1つだと言う。このキャンプを通して子どもたちにどのような変化が現れたのだろうか。

子どもたち自身が話し合う「ネットの問題」
 ネット社会に起きている諸問題は、世界中で共有されている課題だ。そんな中、日本ユニセフ協会の中井裕真さんは、子どもたち自身がネット問題について話し合う竹内和雄さんらの活動を知り、2019年からユニセフ「子どもスマホサミット」を全国5箇所で開催している。その中で「ネットでの出会い」や「ネットいじめ」「ネットの信頼性」などを、中高生自身が話し合い、最後に大人と意見交換をする。様々な意見が出る中で、子どもたちから大人にとって意外な提案が出てきたという。

急増するかもしれない?「ゲーム障害」
 2019年、WHO(世界保健機関)はネットゲームのやりすぎで日常生活に支障をきたしてしまう「ゲーム障害」を、治療が必要な重い「病気」として認定した。神戸大学大学院教授の曽良一郎さんは、もともとは薬物依存の研究診療をしてきたが、現在、ゲーム障害につながるようなネットゲーム依存の問題に取り組んでいる。重度のネットゲーム依存では、ゲームをしていない時も、脳の司令塔にあたる前頭前野で機能不全が起こり、それは薬物依存と変わらないくらい重症なケースもあるという。ゲームの利用時間を自分でコントロールできず、人間関係や健康などに支障がある状態が1年以上続くような場合、ネットゲーム依存の疑いありと診断されるのだが、コロナ禍で人との関わりが減りつつある現在、これからその傾向が高まることが懸念されている。

スマホとSNSの中で変わっていく人間関係
 スマホとSNSの普及により、人間関係は大きく様変わりした。現在は、「選択的な人間関係」が「主流化」していると語るのは、早稲田大学教授の石田光規さんだ。これまで、未知の他者と知り合うのは、学校や会社、地域などでの、偶然の出会いがきっかけであったが、現在は、SNSの「ハッシュタグ」などを利用してまずネット上で知り合い、「あぶれない人間関係」を作るために約束事を交わして、リアルで出会う前に友人関係を作っておく。かつてのように、時間をかけて相手と知りあい、仲を深める関係は敬遠されつつあり、コストパフォーマンスのいい人間関係を求めあう傾向にあるという。つまり、あらかじめ友達関係という前提で集まって、そこにあとから「友達らしい」行動やイベントを詰め込んでいくというのだ。

スマホとネットで変わる人間の本質
 現代の「多様な価値観が認められつつも、他人の目を気にする人間関係」の背景には、日本の景気の変化が影響していると説くのは、筑波大学教授の土井隆義​さんだ​。高度成長期であった1980年代までは、皆が山の頂上の価値観を目指して歩く、言わば「山登り型の社会」であり、同世代同士の小さな価値観の違いは気にならなかった。しかし、1990年代以降の低成長期に入ると、平らな「高原的な社会」となり、各人がバラバラな方向を向いて歩きはじめ、周りの同世代との小さな価値観の差異がどうしても気になるようになってしまったのだという。さらに内閣府が「世界青年意識調査」の中で行っている「友人や仲間のことで悩みや心配ごとがある」という調査では、1970年代から徐々に下がってきていた数値が、なぜか2000年以降反転し、増加の一方を辿っている。そこには、閉じた人間関係の中での「同調圧力」の強まりが影響しているという。


主な取材先
竹内 和雄​さん(兵庫県立大学)
中井 裕真さん(日本ユニセフ協会)
曽良 一郎さん(神戸大学)
石田 光規さん(早稲田大学)
土井 隆義​さん​(​筑波大学)

トップへ戻る