関東大震災の火災被害
1923年9月1日。突如発生した巨大な地震によって関東大震災が引き起こされた。被害を受けた家屋は約29万棟で、犠牲者は約10万5000人。他の地震災害と比べても、その数は突出している。
そんな関東大震災の大きな特徴は、火災による被害の比率が高い事だ。犠牲者の約9割が火災によって焼死したとされている。そして最も被害を受けたのが東京の人々だった。
被服廠跡地での大火災
東京都墨田区にある横網町公園は、関東大震災時の最大の被害が発生した現場だ。当時この場所は、旧陸軍の被服廠跡地という広い空き地となっており、この空き地に避難した多くの人々が大火災に襲われた。
犠牲者は約四万人。はたして被服廠跡地でどのような大火災が起こったのだろうか?
なぜ大火災が起こったのか?
信州大学名誉教授の榎本裕嗣さんは、関東大震災の大火災に地下の天然ガスが影響を与えたことを指摘する研究者の一人だ。実は関東地方の地下には南関東ガス田という日本最大規模のガス田が存在している。激しい地震動の影響を受けて、地下の天然ガスが漏れ出し、爆発的な燃焼を引き起こしたというのが榎本さんの仮説だという。
天然ガスの影響を疑う根拠とは何なのか?榎本さんは大きく3つの根拠を説明する。
南関東ガス田とは?
大火災に天然ガスが関与したのかについては、反対する意見も多くあり、未だ明らかになっていない。しかし関東地方の地下に巨大なガス田が存在する事は、紛れも無い事実だ。
では関東地方の地下に存在する天然ガスはどのように生み出され、どのようなガス田が形成されているのか?南関東ガス田の研究を進める浦井暖史さんは、このガス田の大きな特徴は、地下水に天然ガスが溶けている水溶性のガス田である点だという。そして地下の天然ガスを生み出すのは、小さな微生物の働きだった。関東地方に広がるガス田の実態に迫る。
次の大地震に備えて
関東大震災の大火災と天然ガスを結びつける直接的な証拠は見つかっていない。一方で過去の証言や被災品からは、その可能性を示す間接的な根拠が見つかっている。そのため榎本さんは防災の面からも天然ガスのリスク評価を進めるべきではないかと提案している。
次に起こるかもしれない大地震に対して、どのように備えるべきかを考える。
主な取材先
榎本 祐嗣さん(信州大学 名誉教授)
浦井 暖史さん(信州大学 助教、海洋研究開発機構 外来研究員)
海洋研究開発機構
東京都慰霊協会