かわいらしい声で歌うコンピューター・ソフトの衝撃!
人間ではない歌手が熱狂的な支持を集めている。その名は「初音ミク」。ヤマハのボーカロイドという歌声合成技術をベースにしたコンピューター・ソフトである。擬人化されたキャラクターのかわいらしい歌声は、まだまだ人間らしくはないが、なぜか歌声として人を惹きつける魅力を持っている。
歌声を合成するには、実は人間の歌声が必要?
初音ミクの歌声は、ゼロから作られているのではなく、録音された人間の声を元に、人間らしく合成されている。細かな調整によって歌声を作りこむことで、人間のような「歌い回し」を表現すると、まるで歌手が歌っているかのような印象を与えることができる。
「人間らしさ」とは「歌い回し」にあり
歌声の「人間らしさ」とは「歌い回し」にある。人間の歌い回しを真似る歌声合成ソフトの歌声には抑揚があり、感情を揺さぶるような魅力がある。脳には、人間の歌声に敏感に反応する「スピーチモード」と呼ばれる機能の存在が推測されている。機械の歌声であっても、「人間らしさ」があれば、人の心を動かすことが可能ではなかろうか。
驚異のハイパーソニック・エフェクト
物理的な音波として歌声を捉えた時、人の心を動かす秘められた音の存在が最年の研究からわかってきた。その音の効果は「ハイパーソニック・エフェクト」と呼ばれ、超高周波により脳の深い領域を活性化し、感動や快適さをもたらすという。民族音楽の特殊な歌声には、ハイパーソニック・エフェクトをもたらすものが確認されている。
歌を歌い、聴き、脳が幸せを感じる
小鳥が歌を歌うときに、脳が幸せを感じていることが、最近の研究で明らかになった。報酬系神経回路と呼ばれる快感をつかさどる脳の領域が、小鳥が求愛の歌を歌った時、あるいは、歌おうとした時に活性化することが確認されたのだ。また、求愛の歌を聴くメスも幸せな気分になることがわかっている。人間にも報酬系神経回路があることから、歌声に感動するというのは、歌を歌うこと、歌を聴くことで、快感を得るからとも言える。
主な取材先
伊藤博之さん(クリプトン・フューチャー・メディア)
剣持秀紀さん(ヤマハ)
中野倫靖さん(産業技術総合研究所)
後藤真孝さん(産業技術総合研究所)
榊原健一さん(北海道医療大学)
仁科エミさん(メディア教育開発センター)
へスラー・ニールさん(理化学研究所)



