ガリレオX

焚火を眺めてサイエンス 火の不思議・燃焼のメカニズム

BSフジ
本放送:08月11日(日)昼11:30~12:00
再放送:08月18日(日)昼11:30~12:00

 人類はいつ火を発見したのか?落雷による森林火災や火山噴火だと言われているがそれは想像の枠を出ない。やがて人類は火とは何かを理解し、コントロールする手段を得て、さらに応用科学によって文明を築き上げた。人類が火をどうやって手に入れたのかについて、火の起源神話に何かヒントが隠されていないだろうか?そもそも火とは物質なのだろうか、それとも現象なのだろうか?そして現代では、国際宇宙ステーションの日本実験棟きぼうで、史上初の液体燃料の燃焼科学実験がおこなわれ成功した。重力や大気の影響を避けて観察するために、宇宙の無重力での燃焼実験が不可欠だったのだ。焚火をじっと眺めるうちに気になってくる火の不思議から、最新の燃焼科学までを解説する。

縄文人と火との関係
 自然の風化作用は長い年月をかけてあらゆる痕跡を消してしまう。人類が最初に火を使った時代の痕跡も然りだ。土にもどる。ところが、溶けだすカルシウム分によって土壌のpHが中和され、普通の遺跡では残らないようなものが保存されている場所がある。それは縄文人のごみ捨て場とも言われる「貝塚」だ。新石器時代にあたる縄文時代の貝塚が日本には多く見つかっており、縄文人の食べかすである貝殻や動物の骨などと一緒に、海水から塩を作るために火にかけて使った製塩土器や、3500年前の木製の発火道具など、火の使用の痕跡を確認することができる。

発火法と火の起源神話
 人類がどうやって火を手に入れたのか?この疑問に対して考古学は無力だ。なぜなら、火の発見と入手は、文字が発明されていない「無文字社会」で起こった出来事だからだ。東北大学で宗教民族学を専門とする山田仁史准教授は、その手がかりは世界中に残された「神話」の中にあると言う。なぜなら神話は無文字社会において、上の世代から下の世代へと口伝されたものだからだ。興味深いのは、神話から読み取れる人と火の起源は、ギリシャ神話のプロメテウスのように、火を盗むタイプの話と、古事記のカグツチのように、女性の中にあった火を取り出すタイプのものに大別されるという点だ。また、木と木の摩擦で火起こしをする方法は、神話の中では男女の交合に喩えられるなど、シンボリズムとも深く関係する。

燃焼とは現象である
 そもそも火が燃えるとはなんだろうか?東京大学の津江光洋教授は、「燃焼とは発熱と発光をともなう高速の化学反応だ」と定義を語る。燃焼は自動車や飛行機、火力発電、工業炉など現代生活のあらゆる場面で使われている技術だ。だが例えばエンジン内部の高温高圧の極限環境で、燃焼がどのように起きているのかについてなど、実はあまりよくわかっていない。さらに燃焼の研究を進めるのにどうしても障害となるのが、地球の重力だと言う。空気の対流現象が起こり、現象が乱されてしまうのだ。

無重力の宇宙で燃焼実験!
 燃焼のより詳細な観察をするために、燃焼実験が宇宙で行われることになった。国際宇宙ステーションにある日本実験棟「きぼう」で初めてとなる実験だ。2015年にJAXAのHⅡ-BロケットでISSに燃焼装置が送り届けられ、2016年に大西卓哉宇宙飛行士により「きぼう」内部の多目的ラックへのセットアップが完了。2017年にいよいよ日本初となる液体燃料の燃え広がり(群燃焼)実験が行われた。そこではなんと予期していなかった特異な現象も見つかったと、研究代表者である山口大学の三上真人教授は語る。なぜ宇宙で燃焼実験をしたのか、特異な現象とは一体何だったのか。


主な取材先
山田仁史さん(宗教民族学/東北大学大学院)
津江光洋さん(燃焼工学/東京大学大学院)
三上真人さん(燃焼学/山口大学大学院)
菊池政雄さん(燃焼科学・宇宙環境利用工学/JAXA)
奥松島縄文村歴史資料館
千葉市立加曽利貝塚

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