小さなモノを精密な動作で運搬する手のひらサイズのロボット
今、新しいコンセプトのロボット開発が進められている。それは、極小の領域で仕事をこなす“小さなロボット”だ。
横浜国立大学の渕脇准教授が開発を進めるのは、全長約10cmの手のひらサイズのロボット。そのロボットは、電子部品など小さなモノを精密な動作で運搬することを目指しているという。その動きの精度は、なんと10ナノメートル。さらに、平面上周囲360度すべての方向に移動が可能で、まさに自由自在に動く。そんな自由自在な動きと精密な動きを兼ね備えるために、ロボットには独自に開発された機構が用いられていた。渕脇さんは、開発中のロボットの作業効率をより高め、製造分野で用いられているロボットの省エネルギー化を目指している。
半導体デバイスの製造技術を応用して作るマイクロロボット
もっと小さいロボットの開発も進められている。日本大学の内木場教授が開発を進めているのは、全長約6mmのロボットだ。一円玉よりも小さいロボットだが、組み込まれた脚を巧みに動かし、一歩一歩、地面を踏みしめて前進する。このような機構を実現するためには部品を高い精度で作り出さなければならない。そこで内木場さんは、ロボットの部品を製作するために、半導体デバイスの製造方法を応用しているという。そして、その加工技術を用いてロボットのさらなる小型化を目指し、最終的に人体などの中で働く自律型のロボットの開発を目指している。
肉眼では見えないほど小さい分子ロボット
顕微鏡を使わなければ見えないナノスケールのロボットの開発も進められている。京都大学の角五教授が開発を進めるのは、分子ロボットと呼ばれる赤血球よりも小さいロボットだ。そのロボットは、最先端のナノテクノロジーを活用し、生物の体内に備わる仕組みをロボットの機構へと応用して作られる。角五さんは、タンパク質やDNAをロボットの本体、駆動源、センサや制御機構として用いることで、新たに分子ロボットの動きを制御することが可能になったという。そのロボットは、どのような活用が考えられるのだろうか?ロボットの活躍の場は、顕微鏡の中に広がる極小の領域にまで広がりを見せている。
主な取材先
渕脇 大海さん (横浜国立大学 大学院工学研究院 システムの創生部門 准教授)
内木場 文男さん (日本大学 理工学部 精密機械工学科 教授)
角五 彰さん (京都大学 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 教授)