月面での地産地消 宇宙農業
夜空をふと見上げると、月明かりが私たち人類を煌々と照らしている。月、それは地球から最も近く、それでいて生物が生存するには過酷な環境をもつ天体。そんな月で、作物を栽培しようとする驚きの研究が進められている。なんと将来月面に長期滞在する宇宙飛行士の食料を月で生産することを目指しているというのだ。さらに研究では栄養バランスも考慮し、複数の作物の種類を栽培することを目指しているという。どんな作物を月面で栽培するのだろうか?そもそもどうやって月面で栽培するのだろうか?研究現場の千葉大学を訪ねた。
地球と月の違い
月面という環境は地球のそれとは全く異なる。例えば重力だ。月は地球の重力の6分の1しかない。重力の違いは植物の成長にどんな影響を及ぼすのだろうか?実は、植物は重力を感じ取り、成長に役立てているという。千葉大学では、地球と全く異なる宇宙の重力を再現し、植物を成長させる実験が行われている。そして、そうした実験から植物が重力を感じ取るメカニズムを遺伝子レベルで解明し、月面で栽培する植物の品種や栽培技術の開発が進められている。
月の重力が生み出す植物の栽培環境の違い
地球に比べ重力が6分の1しかない月では、温かい空気は上昇し、冷たい空気は下降する「空気の循環・対流」が少なくなると考えられている。この違いは作物の栽培に問題を及ぼすことも想定されているのだ。そこで、月面で起こるとされている問題を解決するため、作物の育成環境を高度に制御する技術の研究が進められている。月面では作物の栽培にどんな影響が起こると想定されているのだろうか?その問題をどのように解決するのだろうか?
宇宙からの帰還した植物の実験サンプル
2024年12月、宇宙から千葉大学に植物が届けられた。宇宙で植物を育てるときに起こる様々な課題をより明確にするため、地球の上空約400kmに浮かぶ国際宇宙ステーションで実際に植物を育てる実験が実施されたのだ。現在、地上に帰還した植物のサンプルに対して解析が進められている。この解析結果によって、月面で食料となる作物を育てる研究がさらに進むと考えられている。
主な取材先
千葉大学 大学院園芸学研究院附属 宇宙園芸研究センター
後藤 英司さん
髙橋 秀幸さん
日出間 純さん