失った骨を補い再生させる“骨補填材”
体を支え、内臓を守る“骨”。人間の体の内部には200以上の骨があり、それらは常に新陳代謝による吸収と形成を繰り返すことで健全な状態を保ち続けている。そのため、骨折した場合は折れた骨同士を近づけて固定しておけば、元のようにくっつく。しかし、大きな怪我や病気によって骨を失ってしまうと、人体に備わる能力だけでは元に戻すことはできない。その問題を解決する材料の開発が進められている。
「骨補填材(こつほてんざい)」と呼ばれる材料は、失った骨の代わりに体の中に埋め込むことで骨の再生を促す。新たに開発された骨補填材は、骨の組織の構造を再現することに成功。それにより、骨と同じように吸収されて完全に骨に置き換わる機能を持つ。最新の研究現場では、さらに使いやすさをより高める研究が進んでいる。
歯を再び生やす“歯生え薬”
人体の中で最も硬い組織を持つ“歯”。生後6カ月頃から乳歯が生え始め、その後6歳頃から乳歯が抜けて永久歯へと生え変わる。「人間の歯は、乳歯と永久歯しかない。永久歯を失ってしまうともう二度と歯は生えてこない。」この常識が研究によって変わるかもしれない。
“歯生え薬”と呼ばれる薬は、その名の通り、歯を生やす薬だ。マウスに投与したところ通常2本の前歯に加えさらに1本、合計3本の前歯が生えた。現在この歯生え薬は、生まれつき歯が欠損する疾患「先天性無歯症」の治療薬として国の認可を受けることを目指す取り組みが進められている。先天性無歯症は、未だ根本的な治療法がなく、現在の医療では、入れ歯やインプラントを用いた治療が行われている。しかし、治療期間は長く、10年以上必要になる場合もあるという。もし歯生え薬を用いることができれば、患者自身の歯を生やすという新たな治療法が登場するかもしれない。将来的には虫歯や怪我などで歯を失った治療で用いることも想定されている。
実用化に向けて進む、人体の中でも硬い組織で作られる「骨」と「歯」を再生させる研究の現状を探る。
主な取材先
菊池 正紀さん (NIMS)
髙橋 克さん (医学研究所北野病院)






