シンギュラリティがやってくる
近未来型のAI会議室を舞台に始まったシンギュラリティ・シンポジウム。AI研究者の中島秀之氏、スパコン開発者の齊藤元章氏、経済学者の井上智洋氏の3人に自由な議論をしてもらった。齊藤氏が、シンギュラリティに向かいつつある今の世界は、人間が初めて機械的な知性によって生物学的な進化を遂げる時代だと切り出すと、中島氏は、新しい社会概念Society5.0こそが、AIによる社会革命にあたるのではないかと指摘する。
汎用人工知能のインパクト
経済学者の井上氏は、やがて人間と同じようにどんな仕事でもこなせる汎用人工知能が完成すれば、労働移動が追いつかず大失業が起こる危険性もある一方、私たち人間が働かなくてもよい世界になるかもしれないという持論を展開する。
脳機能をハードウェアで再現
人間の脳の1000億の神経細胞と100兆のシナプス結合の全ての構造を取り出して、コンピュータで模倣することはできるのか?そしてそれはソフトウェアなのかハードウェアなのか?議論が続く。
人間の身体と機械の融合
脳だけでなく、人間の身体も機械と融合したり、機械を取り込んだりしていくという。人間の能力の限界を本気で上まわるためには、肉体が足かせとなっているというのだ。しかし倫理的な問題もある。
2017年スパコンが超進化する
2017年はスーパーコンピュータの進歩にとって、エポックメイキングな年になるという。さらに2018年には、スパコン「京」のなんと100倍の演算能力を持つ「1エクサフロップス」のスパコンも現れるというのだ。そこでまず取り掛かるべきは全脳機能の解明だ。
言葉と料理と人工知能
話は具体的にどんな人工知能とやロボットが、何年後に現れるのかにおよぶ。言葉の意味を理解できるAI、創作料理を作れるロボット・・・。その世界のイメージとは?
人工知能と感情・本能・生存欲求
人間の脳を真似て作られた人工知能に、もし「生存欲求」が生まれてしまったら危険ではないのか?価値観の尺度を設定するための、報酬系にあたる部分をどう設計するのか?そしてそれはコントロールできるのか?話し合っておくべき課題は多い。
近未来の社会・経済
汎用人工知能の出現により、人間の仕事が減り、失業が増えることは確実だ。その時はベーシックインカムのような社会保障制度が必須だという。AIによる徹底的な効率化により、生産・製造コストが大きく下がることが予測されている。するとモノの値段が下がり、ハイパーデフレが起こり、資本主義経済さえ崩れて、究極の地産地消社会が現れるという意見も出る。
エネルギー・衣食住がフリーに
汎用AIによる新エネルギーの開発により、エネルギー問題が解決された世界では、衣食住すべての値段が限りなくゼロに近づくという。対立意見も出て、議論はますます深まっていく。
主な取材先
・中島 秀之 さん(東京大学)
・齊藤 元章 さん(PEZY Computing)
・井上 智洋 さん(駒澤大学)