幼児期の記憶の不思議
幼少期、特に3歳以前の記憶がある人は非常に少ない。これは「幼児期健忘」という一般的な現象だ。最近の研究で私たちは幼少期のことを「覚えていない」わけでも「忘れている」わけでもないことが分かってきている。では何故、子どもの頃のことを思い出せないのか。そこには3歳以前の「言葉なしの世界」と3歳以降の「言葉ありの世界」の違いに理由があるという。その他にも、記憶をする時の時間や回数、環境などによっても記憶期間は大きく変化することなどがわかっている。
昔のおもちゃから読み取る「子どもとは何か?」
現代と異なる様々な時代背景における子どもを知るのにうってつけなのが「おもちゃ」だ。おもちゃには、その時代の大人が子どもに託す夢や希望が表われるという。おもしろいのは、例えば第二次世界大戦中のおもちゃは戦争一色と思いきや、アメリカの人気キャラクターが和服を着ていたり、日本兵の軍装をしていたりと、大人社会のコンプレックスが子どものおもちゃに映しこまれているのがわかる。
今の子どもと昔との子どもの社会的位置づけの違い
今の子どもは「知育玩具」と言われる遊びながら学ぶことができるおもちゃを与えられ、遊びを通しても「子どもは教育されるべきもの」という社会通念が普及している。だが、例えば江戸時代には、遊びを通して子どもに学習させるという観念はなかったようだ。身分制社会であったため、学習すれば出世ができるという概念がなかったことが大きいが、乳幼児死亡率が高かった為、大きくなるまで健康に育つかどうか分からない子どもには、ただ健やかにすくすくと育つことが願われた。
子どもたちが歩いて調べた郷土学習
戦後約15年が経った1959年に発行された「北白川こども風土記」。この本は、京都にある北白川小学校の当時の小学4年生約50人が3年間かけて郷土の歴史や文化、風習を調べ上げてまとめたもので、その小学生ばなれした完成度から、高く評価され、映画化までされた。手間がかかり、楽しいだけではない風土記づくりを子どもたちはどうして成し遂げられたのか。残された本や映画から、子どもたちは「もはや戦後ではない」社会の空気を感じとり、一生懸命取り組めば、明日は今日より良くなるという感覚を持ち、能動的に地域社会に関心を持っていたことがうかがえる。
主な取材先
川合 伸幸さん(名古屋大学/中部大学)
是澤 博昭さん(大妻女子大学)
菊地 暁さん(京都大学)
池側 隆之さん(京都工芸繊維大学)
本岡 俊郎さん(「北白川こども風土記」執筆者のひとり)
国立民族学博物館
京都文化博物館