ガリレオX

<アンコール>科学における仮説とはなにか 仮説が世界を前へと進める

BSフジ
本放送:05月31日(日)昼11:30~12:00

「仮説」とは「その真偽をともかくとして、何らかの現象や法則性を説明するのに役立つ命題」とされている。文明の誕生以来、私たちは見上げた星空の動きや生命の起源など、世界の不思議を読み解こうと思索を重ねてきた。そして19世紀を過ぎてようやく、データを集め、仮説を立て、予測をし、実験や観察によってそれを確かめるという「科学的な」研究方法を手に馴染ませたことで、科学は目覚ましい進歩を遂げることになる。  「仮説」の歴史を紐解きながら、いま注目される最新の仮説を紹介し、科学における仮説とは何かについて考える。

仮の説とは何か?なぜ仮説が必要か? 
「科学的に正しい」と言われることも絶対的な真実であるという保証はない。本当に「科学的に」言うのなら、世界のすべてが、今のところ誤りが見つかっていないだけの「仮説」ばかりで成り立っていると言えよう。この場合の「仮説」とは、「誰にでも確かめることが可能な根拠のある推測」である。京都大学の科学哲学者、伊勢田哲治准教授によると、「科学」は近代になってから、目に見えているものを注意深く観察することで法則を見つけるようなステージから次のステージへ、目に見えない世界の現象について仮説を立てて、新しい予測をすることへと変化してきたという。

最新の仮説紹介① ホログラフィー原理
 私たちの住む地球を含む全宇宙の空間は実はホログラムのように幻のようなものかもしれない・・・。そんな不思議な仮説が世界中の理論物理学者たちを魅了している。大阪大学の素粒子物理学者、橋本幸士教授もそのひとりだ。ホログラフィー原理というその仮説は、重力の謎を解くために考えられたものだと言う。自然界の根源的な4つの力のひとつである重力は、他の力に比べて極端に弱く、なぜか量子力学で計算することができないという特殊なものだ。ホログラフィー原理は、我々の3次元空間で働く重力を、ひとつ低い次元の2次元空間で働く素粒子の振る舞いに置き換えて、改めて計算可能なものにしようという試みだ。

仮説の歴史
 科学と仮説との関係は実はそう古くない。ギリシャの哲学者アリストテレスの時代には、自然を観察し続ければ世界の仕組みはおのずとわかるとされ、仮説を立てるという意識はなかった。そのため、宇宙の中心は地球であるとする天動説も、長いあいだ疑われることが無かった。仮説を立てて科学研究をするという手法が普及したのは19世紀になってからで、原子や分子など肉眼では見えない世界の現象が、仮説によりうまく説明できることがわかってからだ。そして今、広く使われているのは仮説演繹法という手法で、「種の起源」を書いたダーウィンも使った研究方法だという。

最近の仮説紹介② 隕石の海洋衝突が生命の材料を作った。
 仮説は生命の起源を探る研究でも活躍している。東北大学の古川善博准教授が研究を進めるのは「隕石の海洋衝突で起きた化学反応によって生命の素が作られた」という仮説だ。もともとの提唱者は物質・材料研究機構名誉フェローの中沢弘基氏だ。鉄を豊富に含む隕石が40億~38億年前、大量に原始地球の海に衝突し、大爆発により湧き上がった蒸気の雲の中で、水、二酸化炭素、窒素、鉄などが化学反応を起こし、生命材料となる有機物が作られたというのだ。秒速1kmでの隕石衝突模擬実験を重ね、ついに13種類のアミノ酸と2種類の核酸塩基の生成に成功した。


主な取材先
伊勢田 哲治さん(京都大学)
中沢 弘基さん(物質・材料研究機構)
橋本 幸士さん(大阪大学)
古川 善博さん(東北大学)

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