津波の圧倒的な破壊力
巨大津波に飲み込まれた東日本沿岸部。取材カメラが入った陸前高田市や気仙沼市などの多くの町は、以前の姿を想像することができないほどに破壊され尽くしていた。津波研究の第一人者である、東北大学の今村文彦教授は、今回の津波被害を「津波による浸水、破壊、さらには破壊によって引き起こされた大規模火災と、近代の津波災害のすべて起きてしまった」と振り返る。
研究者は今回の津波を想定していたのか?
岩手県宮古市では、今回の津波の最高到達地点が38.9メートルに達した。各地の堤防や防潮堤を軽々と乗り越える巨大な津波を、研究者は想定していなかったのか? 東京大学地震研究所の都司嘉宣准教授は、「これで大丈夫と思った、その弱点を突かれている。津波研究者も含めて油断していた」と、これまでの津波防災の問題点を指摘する。
なぜ複数の震源域が連動したのか?
東日本の太平洋側では、どのような地震が起きることを想定していたのか? 東京大学地震研究所の古村孝志教授は、「宮城県沖で30年以内に地震が来る確率は、99.9%だとわかっていた。しかし、実際に起きた地震は宮城県沖にとどまらず、茨城県沖までの複数の震源域が連動することでマグニチュード9.0まで大きくなった」と、これまでとはパターンの違う地震の発生に驚嘆する。
千年前に日本を襲った“貞観地震”
一方、今回と同様の津波が実は過去にも起きていたことを実証していた研究者がいる。産業技術総合研究所の宍倉正展さんは、古文書に記された平安時代に起きたとされる“貞観地震”の実態を、地層ボーリング調査によって解明。そこから見えてきたのは、巨大津波は千年に一度繰り返されているという事実だった。
主な取材先
大和田祐一さん(陸前高田市消防団)
今村文彦 博士(東北大学)
都司嘉宣 博士(東京大学地震研究所)
古村孝志 博士(東京大学地震研究所)
宍倉正展 博士(産業技術総合研究所)
林 能成 博士(関西大学)