イトカワの衝撃
「はやぶさ」の地球帰還によって人類が手にすることができた小惑星上の微粒子。このサンプルの科学的な価値を高めているのは、それがどのような小惑星上にあったのかが、明確にわかっていることだ。はやぶさはイトカワへ着地する前に、その姿を詳細に観測していたのだ。しかし当時、科学者は「はやぶさ」のカメラが捉えた小惑星の姿に衝撃を受けていた。その姿が予測とあまりにもかけ離れていたのだ。はやぶさはイトカワで一体何を見たのか?
サンプルは何を語るのか?
地球以外の天体に着陸して持ち帰られたサンプルとしてはアポロ計画の「月の石」以来となるイトカワの微粒子。サンプルを分析した研究者は「透明感があって綺麗な宝石のようにみえた」と振り返る。分析がまず明らかにしたのは、イトカワの岩石と隕石の特徴が一致したという事実。これにより、隕石が小惑星からやってきたという仮説が実は初めて実証されたのだという。サンプルはさらに何を語るのだろうか?
はやぶさ2が目指す天体とは?
サンプルの分析が進む中、「はやぶさ2」がプロジェクトとして正式にスタートした。目指すのは「はやぶさ」が向かった小惑星とは異なる性質を持つC型小惑星。その岩石には、有機物や水が多く含まれるという。探査の候補になっている天体は「1999JU3」と呼ばれる小惑星。しかし、探査機が実際に着地してサンプルを採取できるかどうかは、天体のある属性に左右されるという。それを明らかにするため、長野県木曽町の天文台で重要な観測が行われていた。
はやぶさ2の新たな挑戦
「はやぶさ2」のサンプルの取り方は、弾丸を小惑星表面に打ち込み、飛び散った物質をカプセルに導き入れるという「はやぶさ」で開発された技術を踏襲している。だが、JAXAの実験室では、さらに多くのサンプルを採るために、弾丸に回転を加えるテストが行われていた。さらに「はやぶさ2」では、小惑星表面からサンプルを採取するだけでなく、地下からも岩石を持ち帰る計画が進んでいる。どのようにして地下のサンプルを採取するのか?
海と生命の起源を探る旅
太陽系では目立たない存在である小惑星に、科学者はなぜ探査機を送り込もうとするのか? それは、太陽系がどのように誕生し、地球のような惑星がどのように生まれたのかを知る手がかりは、小惑星のような小さな天体にしか残されていないからだという。2014年の打ち上げを目指す「はやぶさ2」は、地球の海や生命の起源を探ることをミッションに掲げている。なぜ小惑星の探査から、我々の起源に迫れるのか?
主な取材先
吉川真博士(JAXA)
安部正真博士(JAXA)
澤田弘崇博士(JAXA)
土’山明博士(大阪大学)
橘省吾博士(東京大学)
渡部潤一博士(国立天文台)
三戸洋之博士(東京大学木曽観測所)