こうのとり、危機一髪
退役したスペースシャトルに代わり、大型の荷物を国際宇宙ステーションへ運べる唯一の宇宙船となった日本の宇宙船HTV(こうのとり)。実は、2009年に打ち上げられたHTV初号機は、宇宙のごみ、スペースデブリとの衝突の危機に直面していた。フライトディレクターが当時の模様を振り返る。
恐るべきデブリの破壊力とは?
スペースデブリはこの5年で爆発的に増え、10cm以上のデブリは1万6000個を超えた。特に、2007年の中国の衛星破壊実験で発生した約3000個のデブリは国際宇宙ステーションの軌道と交差し、滞在する宇宙飛行士たちを脅かしている。デブリの速さは秒速8km。超高速衝突実験によると、たとえ10cm以下の小さなデブリであっても、人工衛星を爆発させるほどの破壊力を持っているという。
自己増殖するスペースデブリ
デブリ同士の衝突によって発生した破片が次の衝突を引き起こし、次々と衝突が連鎖的に起きる事態が懸念されている。これは「ケスラーシンドローム」と呼ばれ、デブリの空間密度が臨界値を超えると進行を止めることができないという。2009年、すでにケスラーシンドロームが発生しているのではないかという出来事が起こり、宇宙関係者を震撼させていた。
漁網でデブリを除去?
増え続けるスペースデブリを漁網で取り除く? そんな方法が今、有力視されている。だが、漁のように網でデブリをとらえるのではない。日本独自の漁網製造技術から生まれた“宇宙空間でも切れない紐”を使ってデブリを地球に落とすというのだ。その方法とは?
365日体制のスペースデブリ観測
岡山県美星町に宇宙を監視するふたつの大型望遠鏡がある。地上からスペースデブリを観測する専門の施設だ。そこではJAXAからの依頼に基づいて365日24時間体制でスペースデブリの観測が続けられ、日本の宇宙活動を支えている。
主な取材先
浅見敦夫さん(日本スペースガード協会)
尾﨑浩司さん(日東製網)
河本聡美さん(JAXA未踏技術研究センター)
花田俊也さん(九州大学准教授)
松尾弘毅さん(前宇宙科学研究所所長)
山中浩二さん(JAXA HTVプロジェクトチーム)
吉冨進さん(日本宇宙フォーラム)