ガリレオX

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超伝導100年 電気抵抗ゼロがひらく未来

BSフジ
本放送:10月09日(日)昼14:47~08:30
再放送:10月16日(日)朝8:00~08:30

ある物質を一定の温度以下に冷やすと、突然電気抵抗がゼロになる超伝導。今年は、この不思議な現象が発見されて100周年にあたる。超伝導はこれまでになかった技術革新を生み出しているが、実用化されるまでには超えなければならない大きな壁があった。研究者は、より高い温度で超伝導が起こす物質を追い求め、最近は鉄を主成分とする第3の超伝導体も発見された。超伝導100年を振り返り、電気抵抗ゼロが生み出す驚くべき可能性を探っていく。

偶然発見された超伝導
金属の温度を下げたとき電気抵抗はどうなるのか? 20世紀初頭、物理学者の間にあったこの論争は、絶対零度では電子が凍り電気は流れないという説と電気抵抗が小さくなっていくという説に二分していた。1908年に世界で初めてヘリウムを−269°Cに冷却し液化することに成功したオランダの物理学者カメルリング・オネスは、純度の高い水銀をつくり、この問題に挑む。そして1911年、電気抵抗がゼロになるという予想もしなかった異常な現象を偶然発見する。なぜオネスは世紀の大発見に至ったのか?

超伝導の応用に立ちはだかった壁
オネスは超伝導現象を応用して、強力な電磁石を作ろうとした。しかし、そこには大きな壁があった。超伝導は磁場に弱いという性質があり、自身が作り出す磁場によって超伝導状態が壊れてしまうことがわかったのだ。この問題を解決する超伝導体が発見されたのは1960年代。強い磁場の中でも電気抵抗ゼロの超伝導状態を保てるようになり、応用への道が開けたのだ。

半永久的に流れる電気
超伝導の応用によって実現した夢の技術が2027年に開通予定のJR東海の「超電導リニア」。車両を電磁石の作用によって浮上・推進させ、時速500km以上で走行する性能は、一度流した大きな電流が半永久的にコイルに流れ続ける「超電導磁石」がなければ実現しなかった。また、医療機関に普及している人体の内部を画像化するMRIや、物質の構造を解析するNMRと呼ばれる装置も、超伝導が可能にする強力な磁場がなければ世の中に存在しない装置だという。

臨界温度の壁を破る高温超伝導
現在実用化されている超伝導は、高価で希少な液体ヘリウム(−269°C)によって超伝導体を冷やさなければならないという難点がある。だが、1986年に発見された高温超伝導体は、安価でありふれた液体窒素(−196°C)の温度で超伝導がつくり出せるため、実用化に向けた新たな可能性が広がった。高温超伝導体の探求は今も続き、2008年にはこれまで原理的に超伝導にならないと思われていた鉄を含んだ超伝導体が日本で発見され、世界を驚かせた。さらに、送電線の電気抵抗で生じる発電所からの送電ロスを大幅に低減させるため、液体窒素で冷却した「超電導ケーブル」を実際の送電網につなげる実証実験が横浜市で始まろうとしていた。


主な取材先
下山淳一さん(東京大学)
白國紀行さん(JR東海)
山下裕市さん(東芝メディカルシステムズ)
清水 禎さん(物質・材料研究機構)
北口 仁さん(物質・材料研究機構)
木本浩司さん(物質・材料研究機構)
細野秀雄さん(東京工業大学)
塩原融さん(国際超電導産業技術研究センター)
林 和彦さん(住友電気工業)

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