植物を見分けるチョウの能力とは?
チョウの幼虫は、ほとんどが特定の植物だけを食べて育つため、メスチョウは産卵するためにまず幼虫の食草を探し当てなければならない。ファーブルの「昆虫記」以来、この本能に根ざした行動が生じる仕組みは謎であったが、チョウが葉の味を手がかりに産卵する植物を特定していることはわかっていた。
味覚の遺伝子が産卵行動を引き起こす?
2011年、 植物の葉の味を認識するために不可欠な遺伝子をJT生命誌研究館のチームが世界で初めてつきとめた。さらにその遺伝子の機能だけを阻害したチョウを使った実験から、味覚の遺伝子が産卵行動をもコントロールしている可能性が浮上してきた。最新の遺伝子研究で解明される味覚と産卵行動の不思議な関係とは?
食草と種分化の密接な関係
ミカン科を食べるナミアゲハとセリ科を食べるキアゲハが、共通の祖先から分化してきた進化の歴史を見ると、食草の変化が新種の誕生を後押しした可能性が高いという。その謎を解く鍵を握るのが、今回発見された味覚の遺伝子。この遺伝子に何が起きると新たな種が生まれるのだろうか?
味覚が進化を操る
食草を変えながら進化したチョウと同様に、味覚に関わる遺伝子に変化が起きたことで、過酷な状況下でも巧みに進化した生き物がいる。アフリカ沖のセイシェル諸島に生息するセイシェルショウジョウバエだ。この不思議なハエは、ある遺伝子が壊れたことにより味がわからなくなり、毒のある実を食べられるように進化したという。動物たちの味覚は、種の多様化の歴史とどのように関わっているのか?
主な取材先
吉川 寛さん(JT生命誌研究館)
尾崎克久さん(JT生命誌研究館)
西田律夫さん(京都大学)
松尾隆嗣さん(東京大学)
中村桂子さん(JT生命誌研究館)



