ヒトも共生で誕生した
光合成をする植物がもつ葉緑体は太古の昔、シアノバクテリアという独立した生き物だった。あるとき植物細胞の中に取り込まれ、細胞内共生を始めたのだ。ヒトを含むほとんど全ての生物がもつミトコンドリアも、同じように細胞内共生を始めたことから生じたものだ。このような共生はどうしてうまくいっているのだろうか?葉緑体やミトコンドリアはなぜ増えすぎないのだろうか?
吸血鬼という名の花
イネ科植物の根に寄生し、その養分を奪って成長するストライガという植物がある。ルーマニア語の「ストラゴイ=吸血鬼」にちなんだ名前だ。美しく可憐な花の姿とは裏腹に、現在アフリカなどで深刻な農業被害をもたらしている。実はこのストライガが宿主の植物から奪ったのは、栄養分だけではなかった。なんと、ふつう高等生物間ではありえない、遺伝子の転移が起こっていたのだ。どんな研究からそれがわかったのだろうか?
ダニVS恐竜!
動物の皮膚に寄生し、吸血をするダニ。ダニはトカゲなどの爬虫類からも吸血することを御存知だろうか?アフリカに棲むあるマダニの唾液を調べたところ、昆虫が持っているはずのない、トカゲなど爬虫類に似たホルモンの遺伝子が見つかった。そしてその遺伝子とは、三畳紀から白亜紀の頃に地球上を闊歩していた恐竜のものらしいのだ。ダニが恐竜から血を吸いながら遺伝子も奪っていたことも驚きだが、どうやらこのダニはその遺伝子によりある能力を得て、大進化を遂げて一億年以上も生き抜いてきたようだ。その能力とは?
マトリョーシカ型進化原理
ネズミからネコへと感染するトキソプラズマという寄生虫がいる。これまでの研究でトキソプラズマの祖先は、藻類という光合成をする植物だったことがわかっている。植物が途中で寄生生物へと進化したらしい。最新の研究で、多くの生物がマトリョーシカのような入れ子型の進化を重ね、細胞の中に取り込んだ別の生物の機能を保ったまま現在の姿になったことがわかってきた。さらにマトリョーシカ内部の多層的な相互作用を解明することで、これまでの生命進化の系統樹では描ききれなかった図が浮かび上がってきた。
主な取材先
岩永 史朗 (三重大学大学院)
野崎 智義 (国立感染症研究所)
宮城島 進也 (国立遺伝学研究所)
吉田 聡子 (理化学研究所)