日本とロシアの状況
日露戦争が戦われた当時の日本は、まだ近代化に向けて歩み始めたばかりの小国であり、世界的にも影響力のある国ではなかった。一方の対戦国ロシアは、既に近代化を推し進めており、さらには当時「世界最強艦隊」とも呼ばれていたバルチック艦隊を有していた。軍事力だけをみても日露間には圧倒的な差があり、日本がロシアに戦争で打勝つことなど「あり得ない」と考えられていた時代に、なぜ日本は勝利することができたのか。これまでにも様々な視点から語られてきた日本海海戦だが、近年、新たな視点からこの戦いの記録を綴った貴重な記録が見つかった。
日本海海戦を見つめた異国の軍人
その記録は、日本から見て地球の反対側に位置するアルゼンチンの軍人であったマヌエル・ドメック・ガルシア大佐が綴ったものである。一見すると縁遠そうにみえるアルゼンチン軍人が、なぜ日本とロシアの戦争に関する記録を残しているのだろうか。実はガルシア大佐は、戦争当事国でない第三国の軍人が許可を得て戦争を視察することのできる「観戦武官」という役職についていたために、実際に日本の艦隊艦上から日本海海戦を見届けることのできた人物だったのである。
戦争当事国でない異国の軍人ガルシアは、史上初の本格的な海戦で何を見て、何を書き残したのか?彼の目を通して、小国日本が世界に認められるキッカケともなった日本海海戦に迫る。
主な取材先
古庄 幸一(元海上幕僚長)
<取材協力>
三笠保存会
記念館三笠
日本アルゼンチン協会
アルゼンチン大使館