ガリレオX

ロボットは東大に入れるか 入試から見える人工知能と人間の未来

BSフジ
本放送:01月31日(日)昼12:33~12:00
再放送:02月07日(日)昼11:50~12:20

多くの受験生が志望校合格に向けて、勉強に取り組んでいる中、数年前からある「モノ」が東京大学合格を目指して日々受験勉強に勤しんでいる。人工知能「東ロボくん」である。この「ロボットは東大に入れるか」と題されたプロジェクトは、文字どおり人工知能が東京大学に合格できるよう、ソフトウェア開発をおこなっていくプロジェクトなのだが、主眼は「東大合格」にあるのではない。東ロボくんによる大学受験へのトライアルを介して、ロボットと人間が将来に向けて共生していけるような社会を築くための模索なのである。

東ロボくんはヒト型ロボットではない?
東ロボくんには外形がない。他の受験生と同じように受験会場まで赴き、鉛筆を持って解答をすることはできず、試験問題に書かれている内容や図を東ロボくんが理解できるような形に、人間が変換してやる必要がある。様々な研究機関や企業が、東ロボくんの東大入試突破に向けて各教科に適した”部分脳”の開発を進めており、3年目の2015年には偏差値57.8を獲得した。これは人間の偏差値平均50を超える値だ。その躍進の理由とは何なのだろうか?そしてこのプロジェクトから見えてくるロボットと人間の将来とは?

東ロボくんは試験問題を理解していない?(国語)
スマートフォンやコミュニケーションロボットの社会への普及もあって、最近の人工知能は一見すると「言葉」を理解できているように見える。だから国語の評論問題や小説の問題も意外にすんなり解答できるのではないかと考える人も多いかもしれない。しかし、実際には現状の人工知能は言葉を理解している「ふり」をしているだけで、自然言語の理解にはまだまだ及ばないのが現状だ。それでは、どのように東ロボくんは国語の問題を解いているのだろうか?

東ロボくんは感情がわかる?(英語)
英単語やイディオムを大量に覚えることは受験経験者の誰もが苦労したことだろう。しかし、東ロボくんの単語記憶数はおよそ1000億単語。記憶力に関しては人間とは比較にならない優位さがある。ならば、ある程度の英語の問題は解けるのではないかと思うかもしれない。しかし、センター試験の問題においては、記憶量を問うだけでなく、人間の感情表現にもとづく自然な会話理解が必要な一般常識の問題が含まれている。東ロボくんは、当然、そのような一般常識を持ち合わせていないために苦労している。この壁を東ロボくんはいかに乗り越えようとしているのか?

東ロボくんはガチンコ勝負が好き?(物理)
物理の問題でも、一般常識の理解が課題となる。例えば、地球には重力が存在していることは常識なので、それが問題文に書かれることはない。しかし、東ロボくんは、そういった一般常識を理解していないことから、問題を解けないケースが多々発生する。しかし、問題文を理解さえできれば、あとは物理シミュレーションを使い解くことができる。例えば物理でよく問われる力学の問題では実際にシミュレーション再現を行い、力技で解答を導くことが可能なのだ。

東ロボくんの得点源は数学?(数学)
ロボットなら数学は得意なんじゃないの? 多くの人はそう思うかもしれない。確かに数学の問題においては、人間が逐一指示を出してやれば、ほとんどの入試問題を解くことが可能であると言う。だが、実際には、他の科目と同様に、問題文の日本語理解や、解答に必要な計算ツールをどう使いこなすかがまだ課題として残されている。こういった課題を東ロボくんが解決できれば、東ロボくんプロジェクト全体に大きな貢献をもたらすことが期待できる。果たしてどのような成果へとつながるのか?

東ロボくんは論述の解答を書けるか?(世界史)
2015年に受験した科目の中で、最も得点率が高いのは世界史である。確かに教科書1冊を丸暗記することも容易な東ロボくんは、ひょっとしたら世界史に限らず歴史の問題は百発百中と思われるかもしれない。しかし、そう簡単な話ではない。例えば、東大二次試験では、記述式の問題が出る。東ロボくんは文章を書くことなどできるのだろうか。東ロボくんが出力した論述の解答は、ややぎこちなく不自然なものだった。課題はどこにあるのだろうか?


主な取材先
新井紀子さん(国立情報学研究所)
稲邑哲也さん(国立情報学研究所)
佐藤理史さん(名古屋大学)
渋木英潔さん(横浜国立大学)
東中竜一郎さん(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
石井愛さん(日本ユニシス)
岩根秀直さん(富士通研究所)
内山公宏さん(ベネッセコーポレーション)

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