台所・キッチンが目指すもの/目指してきたもの
台所・キッチンでは包丁で食材を切り、それらを火を使って調理し、水を使って洗い物などを行う。すなわち「火」と「水」を生活空間のなかに取り込んだ場所であり、それらを効率的かつ安全に利用できるようにすることを目指して進化してきたのが台所・キッチンであった。
台所の近代化
日本の住宅は、歴史的に床座文化によって発展してきたため、江戸時代までの台所は座った姿勢で作業するように作られていた。それが大きく変わったのが、明治から大正にかけてである。西洋の文明が積極的に取り入れられたこの頃に、台所も近代化が図られたのだ。近代化に伴う台所の「改善」には、ある二つのキーワードを軸にして図られたが、それは現在のキッチンを考えるうえでも重要な変化であった。近代的な台所の基本的なコンセプトとはどのようなものであり、それによって台所はどう変化したのだろうか?
台所からキッチンへ
昭和に入ると、コンパクトな住空間のなかでいかに快適に料理を行うかという発想のもとに、様々な設備が台所に組み込まれ始める。そして戦後の住宅難を解決するために登場した集合住宅”団地”によって、「台所」は「キッチン」へと大きな変化を迎えることになる。それを可能にしたのは、ある日本の物作りの技術なのだが、その変化は私たちの生活になにをもたらしたのか?
二つの新しいキッチン
キッチンは、「機能的に成熟した設備」だと言われている。では、キッチンはもう進化していないのだろうか? 料理をする人の潜在的なニーズや課題を見つけ出し、それに応えていくような研究開発が現在も行われ、かつてない姿を見せようとしている。たとえば「行動観察」と呼ばれる研究方法によって生み出されたキッチンはどのような設備を備えたものなのか? また驚くべきことに「可動式のキッチン」なるものも登場している。従来は水回りと換気設備の制約によりキッチンの場所を動かすことは非常に難しいとされていた。それはどのようなコンセプトで開発され、そしてそのメカニズムとはどのようなものか?
主な取材先
須崎文代さん(神奈川大学)
大津達也さん(LIXIL)
宮﨑剛さん(LIXIL)
溝田知子さん(LIXIL)
渋谷篤さん(日建ハウジングシステム)