ガリレオX

戦争を社会学で考える 「旧い戦争」から「新しい戦争」まで

BSフジ
本放送:09月25日(日)昼11:30~12:00
再放送:10月02日(日)昼11:30~12:00

 戦争を社会学的に研究する「戦争の社会学」が注目を集めている。その特徴は、戦争の是非や善悪、イデオロギーから離れ、戦争を社会現象のひとつとしてとらえ、メカニズムを解き明かそうとするものだ。戦争を行う社会制度とはなにか?戦争体験の記憶はどう伝達されているのか?メディアは戦争をどう伝えてきたのか?そして戦争はなぜ起きるのか。いま私たちが直面しているテロや内戦を含む「新しい戦争」を考えるのにも、戦争の社会学は新しい視点を提供する。

社会学の視点でみる戦争とは?
歴史学はそこで何が起きたのかを調べるのに対して、社会学はなぜそれが起きたのかを調べる学問分野だ。戦争を社会学で研究するとはつまり、その戦争がなぜ起きたのか、そして戦争でその出来事がなぜ起きたのかを解き明かすことになる。さらに、戦争を善悪で断定しない社会学独特の視点について、立命館大学の福間教授に聞く。

戦争の制度・記憶・メディア
戦争を社会学で考える3つの視点、制度、記憶、そしてメディアについて紹介する。そこで筑波大学の野上准教授は、騎士や傭兵でなく、市民が戦闘の主役となった近代の戦争の様態を4つに分類し、社会学的に分析を重ねる。

戦争体験の記憶研究
アジア・太平洋戦争の激戦地となった硫黄島。そこに住んでいた島民がどんな運命を辿ったのか、実はあまり知られていない。45回目を迎える硫黄島の元島民と子孫たちの会に取材し、山下賢二名誉会長に戦争が島民の生活をどう変えたのかを聞いた。また、島の歴史をまとめた本「硫黄島クロニクル」が完成した。その監修をした明治学院大学の石原准教授によると、戦争体験を聞き取る研究は、今後グローバルな戦争に巻き込まれるかもしれない日本人に重要な示唆を与えるという。

メディアが戦争の記憶を変える
知覧特攻平和会館や予科練平和記念館など、「特攻」の資料を展示することで、その記憶を後世に伝えてきたメディアがある。特攻隊員たちの遺影を見、残された遺書を読むことで、多くの人は胸がいっぱいになり立ち止まる。立命館大学の福間教授は、もう一歩踏み込み、特攻が起きた軍や社会の状況に光を当てることが社会学の役割だという。

新しい戦争とはなにか?
いま世界中で起こっているのは、かつてのような国家同士の戦争ではなく、非国家も交えた、誰が、どこで、誰と戦っているのかさえ見えにくい「新しい戦争」である。桜美林大学の加藤教授はそれを「グローバル内戦」と捉え、世界中の紛争地で実際にそれを見てきた。日本では、平和の定義がバラバラであるため、戦争についての議論が噛み合ない状況だと指摘する。


主な取材先
◆福間良明 教授(立命館大学)
◆野上元 准教授(筑波大学)
◆石原俊 准教授(明治学院大学)
◆加藤朗 教授(桜美林大学)
◆山下賢二 さん(全国硫黄島島民の会)

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