植物に知性はあるのか?
植物には私たちが持つ知性のようなものはあるのだろうか?
そんな謎を研究しているのが京都大学生態学研究センターの高林純示教授だ。
「植物は植物なりに外界の情報を判断する力っていうのがあるわけですよね。人間のような理性というのはないんだけど、植物の世界における、なんか似たようなものっていうのはあるのかもしれないですね。」
そんな高林さんが探り続けるのは普段、私たちが感じることができない植物たちの会話だった。
匂いで伝わるコミュニケーション?
高林さんの研究室では様々な昆虫が飼育されていた。
植物の会話のカギを握るのは植物が発する匂い物質。その手がかりは昆虫に対する植物のある戦略から見つかったという。
「我々のような音声を発するわけではない、そのかわり彼らは、むしろ我々にはわからないような微量な香りの世界、香りの情報世界に生きているというふうに考えています。」
高林さんに植物と昆虫を用いたある実験を見せてもらった。
「トーキング・プラント説」
今から30年以上も前、植物に関する驚くべき仮説が発表された。それは「トーキング・プラント説」。植物の会話に関する論文だった。
高林さんはオランダの大学への留学中に「トーキング・プラント説」に出会ったという。
「みんなは多分、その当時びっくりしたと思うんですね。植物は会話するんだと。」
ところが「トーキング・プラント説」は様々な科学者の厳しい批判を浴び、次第に研究は下火になってしまう。
そんななか高林さんの研究グループは「トーキング・プラント説」の実証に挑むのだった。
新たな農業技術へ
現在、植物の会話に関する様々なメカニズムが研究されている。そしてその知見を新たな農業技術として応用する研究も進められていた。
高林さんはこうした技術を用いれば、植物が丈夫になったり、害虫に食べられにくくなると言う。
「現時点では殺虫剤を撒いたりするのに比べてかなり効果はマイルドですが、環境にやさしい農業というふうに展開していく可能性というのはあると思います。」
植物の会話を応用したまったく新しい農業技術に迫った。
主な取材先
髙林 純示さん (京都大学生態学研究センター)