発電菌が持つ驚くべき能力
発電機能を持った微生物「発電菌」。
酸素がなくても鉄イオンや電極などに電子を渡してエネルギーを獲得することができる微生物のことである。そのメカニズムとして近年、電子を外に出す特徴的な構造があることが解かってきたが詳しい仕組みは謎だった。そこでプロトンと呼ばれる水素イオンに注目して調べてみると、今まで発電菌ではされていないと考えられていた発酵が起きていることが解った。
電気を利用して有機物をつくる微生物
2015年、大きな衝撃を与える研究成果が発表された。
なんと、電気エネルギーを利用して有機物をつくる微生物の存在が世界で初めて明らかにされたのだ。電気を食べて、二酸化炭素からアミノ酸と糖を作って成長や増殖ができるという。この研究で使われた微生物は鉱山などにいることでよく知られている「鉄酸化菌」だった。そんな、身近な微生物がとんでもない能力を秘めていたのだ。この発見が意味することとは?
熱水噴出孔と電気合成微生物
海底には熱水噴出孔とよばれる地下から熱水が噴出している場所がある。
驚くことに、そこから採取した鉱物が電気をよく通すことが解った。そして最近の調査で、熱水噴出孔は天然の燃料電池のようなもので常に電気が流れていることが明らかになった。だとすれば、そこには電気を利用する微生物がいてもおかしくない。今、熱水噴出孔の鉱物から電気を食べて増殖する微生物を探す取り組みが進められている。
海底下の電気合成微生物を利用する試み
海底下から採取してきたコア試料から電気微生物を取り出して利用する研究が進められている。
この微生物は電気エネルギーを使って二酸化炭素を固定しメタンを作ることができるという。電気は保存することができないので、余剰の電気からこの微生物の力でメタンガスを作り、貯めていこうという試みである。
発見されてまだ日の浅い、これらの電気微生物。その生存範囲は今、想像以上に広がっている。今後の研究でどんな世界が見えてくるのだろうか。
主な取材先
渡邉 一哉さん(東京薬科大学)
山本 正治さん(JAMSTEC)
石井 俊一さん(JAMSTEC)
岡本 章玄さん(NIMS)
中村 龍平さん(理化学研究所)