ガリレオX

リニア中央新幹線が切り拓く未来

BSフジ
本放送:03月24日(日)昼11:30~12:00
再放送:03月31日(日)昼11:30~12:00

 次世代の超高速交通、リニア中央新幹線の工事が本格化している。これが開業すると、品川~名古屋間を最速40分、品川~大阪間を最速67分で結ぶことになり、時間距離が大幅に圧縮される。これまでの鉄道の大動脈、東海道新幹線はその開通から半世紀が過ぎ、経年劣化が進んでいる上、南海トラフ地震の想定震源域を通っている。こうした懸念材料への備えの役割もリニアには期待される。約1時間で行き来できるようになることで誕生する首都圏・中部圏・近畿圏から成る約8000万人規模の超巨大都市圏は、日本の総人口の半数を超え、世界にも例がない。リニア中央新幹線によって起こる半世紀に一度の交通革命は、私たちの生活スタイルをどう変え、停滞するイノベーションにどんな影響を与えるのか?都市部の大深度地下工事の現場も取材し、リニア中央新幹線が切り拓く未来をさぐる。

試乗体験!リニア中央新幹線
 これまでの「鉄道」は車輪とレールの物理的な摩擦を使って走る仕組みであるため、安定走行には速度限界があった。リニア中央新幹線は特殊な超電導磁石を用いて地面からも壁面からも車体を浮かせた状態で走行する。これによって時速500kmという超高速走行が可能となった。体験乗車会に同行してわかったその乗り心地とは?

本格化する工事
 東京の始発駅となる品川駅の近くでは、リニアを地下に通すための工事が本格化している。建築物の密集した都市部では新たに地上を走るリニア専用のルートを確保することが難しいため、地下深くにトンネルを作り、そこを走るのだ。またこれまでにない長距離となる南アルプスを抜けるトンネル工事も進む。JR東海の澤田尚夫氏に工事の状況と安全対策について話を聞いた。

交通革命が社会を変える
 歴史を振り返ると、産業革命が推し進められた要因のひとつは、蒸気機関の発明により鉄道が都市間を短時間で結んだことだった。中部大学の林教授によれば、明治時代の日本で構想された両京鉄道(東西幹線連絡鉄道)の敷設も、背景に当時の都市国家構想があったと言う。一方、ヤフーの安宅CSOのチームはビッグデータを使って、リニア開通後にどれだけ時間距離が圧縮されるのかを、開通前と比べた到達所要時間マップとして可視化してみせた。品川駅発後3時間で行ける場所は、品川~名古屋間リニア開通後には遠く岡山県や広島県にまで及ぶ。

超巨大都市圏が誕生する
 リニア中央新幹線の開業で日本はどう変わるのか?エコノミストの中島厚志氏は、首都圏・中部圏・近畿圏の結びつきが強まり、世界一の人口集積地としての巨大都市圏、「スーパーメガリージョン」が誕生すると言う。強まる人口集積によって、都市部ではこれまでにない新しい産業の成立が期待される。また、地方のリニア沿線地域も、特性を活かした差別化を図ることで産業の活性化が可能となる。

リニア中央新幹線の意義
 地下深いトンネルに長距離の山岳トンネルといった難しい工事に挑み、莫大な資金を投じてリニアを作る意義とは何なのか?JR東海の宇野護副社長に話を訊いた。ひとつには東海道新幹線の経年劣化への備えとしての意味合いがあり、そしてもうひとつには、リニアは南海トラフ巨大地震が起きても影響の少ない内陸部を通り、地震に強いトンネル区間が多いため、東海道新幹線のバイパスとしての役割が果たせるのだと言う。またリニアはJR東海の自己負担で建設されることになったが、堅いと評価される試算を出していると自信をのぞかせる。

リニアがイノベーションをもたらす?
 リニアはビジネスにも影響を与える。一橋大学の中島准教授によると、リニアのような高速鉄道の開通は、周辺地域の特許出願件数や共同研究を増大させ、イノベーションを促進することが、先行研究から予測されるという。また早稲田大学の入山教授によれば、リニアはこれまでは離れていた広い地域の知と知とを結びつける働きをするため、日本にイノベーションの波を起こし、人と人が顔をつきあわせての情報交換をする機会が増えることで、その波はさらに加速すると予想する。


主な取材先
中島厚志さん(経済産業研究所)
入山 章栄さん(早稲田大学)
宇野 護さん(JR東海)
澤田 尚夫さん(JR東海)
林 上さん(中部大学)
安宅 和人さん(ヤフー)
中島 賢太郎さん(一橋大学)

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