冬眠する動物たち
上野動物園では、クマが冬眠する姿を見ることが出来る。クマはもともと冬眠する動物だが、暖房設備があり十分な餌が与えられる動物園で飼育されているクマは冬眠する必要がない。しかしここ上野動物園では、野生の生態を知ってもらうという目的から人工的に冬眠する環境を整えているのだという。ここで観察されるクマの冬眠の生態とはどのようなものなのか?
冬眠のメカニズム
実は、“冬眠”と呼ばれる動物の生態には、まだわかっていないことが多いという。北海道大学低温科学研究所の山口さんは、そんな謎の解明に取り組んでいる。研究に使っているのはハムスターだ。そんな研究から冬眠のメカニズムが少しずつわかってきたという。また、こうした冬眠の研究は私たちを悩ましている病気の解明にも役立つという。研究から明らかになった冬眠のメカニズムとは?
人類も冬眠できる?
2020年、人類を冬眠させられるかもしれない画期的な発見がもたらされた。本来冬眠しないはずのマウスを冬眠と似た状態に誘導できる新しい神経回路を同定したという論文が発表されたのだ。そこには、視床下部に存在するQニューロンと呼ばれる神経を刺激すると冬眠しないはずのマウスが冬眠状態に入ったという研究成果が示されていた。その研究成果とは具体的にどんなものだったのか?また同じ哺乳類の人間にも同様の可能性があるのか?論文を発表した理化学研究所の砂川さんに話を聞いた。
人工冬眠で拓く未来
もし人類が冬眠できたら、寿命を飛躍的に延ばし、老化や死という概念を大きく変えることになるかも知れない。しかし砂川さんが冬眠研究に向かった目的は、SFの世界を実現するためではなく、医師として働いた経験から来ているという。それは急性疾患への対応として人工冬眠が有効な治療法になるのではないかという信念だった。砂川さんが目指す冬眠を用いた治療法とはどんなものなのか?
医療を大きく変え、多くの命を救う可能性を秘めている人工冬眠。そんな人工冬眠が実現した未来、私たちは想像を超えた生き方を手に入れているだろう。そして、それはそう遠くない未来なのかも知れない。
主な取材先
上野動物園
砂川 玄志郎さん(理化学研究所)
櫻井 武さん(筑波大学)
山口 良文さん(北海道大学)