古事記の読み方

渡部 昇一 著
定 価:
本体920円+税
判 型:
新書判
ページ数:
256ページ
ISBN:
9784898317945
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こんなによく分かる! そして面白い!
日本人なら知っておきたい日本の歴史・神話の故郷
編纂1300年を超える古事記の謎を解く!

本書は三十五年以上も前に書いたもの、つまり一種の「若書き」である。しかし今回、丁寧に読み直してみたが、内容を変える必要のあるところはなかった。この本が最初に出た時の週刊誌の書評に、「危険な本だ」という主旨のものがあったことを覚えている。その頃はソ連瓦解以前であり、国連を批判したり、憲法を批判したり、南京大虐殺説を批判したりすると、議員や大臣も罷免されたものだった。たった三十数年前の話だが、今昔の感に堪えない。その頃に書いたものでいまも変える必要がないのだから、今後も変える必要がないのではないかと自分の「若書き」を読み返した次第である。

著者プロフィール

上智大学名誉教授。英語学者。文明批評家。昭和5年(1930年)、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr. phil., Dr. phil. h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。
著書に『英文法史』などの専門書、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』『渡部昇一 青春の読書』などの話題作やベストセラーが多数ある。平成29年(2017年)4月17日、逝去。

目次

第1章 国産み神話にみる「男と女」の関係

──伊邪那岐・伊邪那美が教える禁忌と勧奨

あるキャリア・ウーマンの選択/先祖からの「遺言」としての神話/『旧約聖書』と『古事記』との決定的な違い/日本に悪虐な皇后や女官が登場しない理由/夫婦関係で女性がイニシャティブを取るとどうなるか/男性、女性、両者にとっての不幸/大八島の誕生/女権運動は、なぜプロテスタント圏から生まれたか

第2章 「さかしら」な女と「貞節」な女

──イブと伊邪那美における「服従」と「不服従」奨

カトリックにおける聖母マリアの独特の位置/日本の神話とゲルマン神話の共通点/「お告げ」を前にしたマリアの服従/聖書は女性の「さかしら」を嫌う/現代人が喪失した「楽園」とは/なぜマリアの死についての伝聞が皆無なのか

第3章 農業国家・日本の建国宣言

──神武天皇が天つ神を祀った故地を訪ねて

神社で寝起きした私の青年時代/カトリックと禅と日本のカミは並立する/神武天皇ゆかりの古社を訪ねて/神武天皇の「神勅」は何を言おうとしているのか/鎮守の森が伐採されるとき

第4章 男が見てはいけないもの

──黄泉国の伊邪那美を垣間見た伊邪那岐の罪

スウィフトが描いた「淑女」の世界/死んだ妻を黄泉国にまで呼び戻しにいった伊邪那岐/伊邪那岐の必死の遁走/「古事記の桃はいまのウメ」という仮説/妻の出産を覗き見た山幸彦の悲劇

第5章 家庭の祭主としての主婦

──国を救った天宇受賣命が女であったことの意味

幸福の価値より道徳的義務を重んじたカント/聖トーマス・アクイナスはカントの正反対/なぜ神は、アダムにイブを与えたのか/お祭りの起源としての天の石屋戸物語/なぜ西洋の家庭では、奥さんがピアノを弾くのか/主婦の家事を「労働」ととらえたことの過ち/いまこそ必要な「喜びの原理」の復権

第6章 万世一系の皇統の起源

──神武天皇の母と祖母は外国人だった

日本の伝統に反した明治政府の廃仏毀釈/日本では、なぜ左が右より格上なのか/皇統は養子に起源を有する/豊玉姫と玉依姫は海神の国出身/皇室の国際化は、なんら不自然ではない

第7章 須佐之男命の真実

──天孫族と出雲族は、いかにして平和共存しえたか

大陸引揚者の古代人が感激したものとは/出雲系のカミが異民族とはいえない決定的理由/建御名方命と建御雷命との勝負の行方/八雲立つ 出雲八重垣/日本人が描きつづけた理想的な新郎・新婦像

第8章 神武建国神話と言霊

──超自然的要素のある国とない国

抹殺されたロシア共産党党首の名前/古代の日本人を買いかぶりすぎた妄説/天皇家の名誉にならない、あまりに率直な記述/「神代」と「人の世」を分けるものは何か/「天の神」の夢のお告げ/超自然的要素を取り除いた国と保持している国

第9章 仏教伝来と用明天皇

──仏法を信じて神道を尊ぶというメンタリティの成立

なぜか最重要人物を黙殺した井上論文/津田博士におけるテキスト無視の独断/欧米の古代史文献と『日本書紀』の違いとは/仏教受容における国際派と国粋派の暗闘/「仏法を信じ、神の道をも敬う」形の成立/日本の家庭に仏壇と神棚が置いてある理由

第10章 英雄・日本武尊は、なぜ抹殺されたか

──その危機管理と計略に学ぶべきこととは

戦後失われた「武」を尚ぶ精神/少年・日本武尊の恐るべき返事/「日本武尊」の誕生/出雲建を殺すのに、彼が最初にしたこととは/武士的危機感を持ちつづけることの重要さ

第11章 古代の日本における愛のかたち

──弟橘比賣命は、なぜ自らを犠牲にしたのか

戦争に行く男を見送る女のまなざし/弟橘比賣命が辞世にこめた思い/男女差を消滅させた最大の要因/スポック博士が「転向」した理由/イギリス労働党にアングロ・サクソン人が少ない理由

第12章 なぜ、天照大神が主神となったのか

──日本民族の文化の継承者としての女性の役割

禁酒法が日本でまったく顧慮されなかった理由/アメリカの女性は、なぜ「家庭」を出て働きにいくのか/ウーマン・リブが日本に根を下ろすための条件/民族の主神が女性であることの意味/日本民族の文化の継承者としての女性の役割

 

あとがき

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