孫子の兵法 勝ち続けるために何をすべきか

渡部昇一・谷沢永一 著
定 価:
本体920円+税
判 型:
新書判
ページ数:
272ページ
ISBN:
9784898318058
アマゾンのショッピングサイトへリンクします。
ビジネスで成功するためにどうすべきか。中国・韓国の理不尽な対日攻撃にどう反撃するか
朝日新聞論説委員に読ませたい一冊です!

(編集部より)→本書は、渡部昇一氏と谷沢永一氏が、『孫子』の説くさまざまな訓話を、現代の日本の状況と照合しつつ論じ合った本です。その教えは21世紀を生きるビジネスパーソンにも参考になる内容です。また、『孫子』と関連して「宋襄(そうじょう)の仁(じん)」を取り上げます。これは、昨今の日韓関係などにもピタリと当てはまる教訓です。「宋襄の仁」とは、宋と楚との戦いの際、宋の公子・目夷が楚の布陣しないうちに攻撃しようと進言したが、襄公は君子は人の困っているときに苦しめてはいけないといって攻めず、楚に敗れたという故事によるものです。本書エピローグ等でお二人はこう指摘します。
「『孫子』は、儒学の反対です。『宋襄の仁』になるなということを教えている。襄公のようにはなってはいけない、ということです」(渡部)
「『孫子』のもっとも重要なエッセンスは『宋襄の仁』になるなであり、『ええかっこしい』ではいけないことに尽きます」(谷沢)
韓国の慰安婦・徴用工・レーダー照射等々の理不尽の対日攻撃に際して、ささやかな反撃(戦略物資の対韓輸出規制)をしたとたん、「報復の応酬に陥りかねない」「即時撤回せよ」と居丈高に一方的に日本政府を批判する社説(2019・7・3)を書く朝日新聞論説委員にも本書を読んでもらいたいものです。
※本書は、2013年に小社より刊行した単行本『孫子の兵法 勝つために何をすべきか』を改題し、WAC BUNKO化したものです。

著者プロフィール

渡部昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英語学者。文明批評家。昭和5年(1930年)、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr. phil., Dr. phil. h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。
著書に『英文法史』などの専門書のほか、『知的生活の方法』(講談社)、『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』『渡部昇一 青春の読書』『古事記の読み方』『万葉集のこころ 日本語のこころ』(ワック)『だから、論語を学ぶ』(谷沢永一氏との共著、ワック)などの話題作やベストセラーが多数ある。2017年4月逝去。

谷沢永一(たにざわ・えいいち)
関西大学名誉教授。1929年、大阪市生まれ。関西大学大学院博士課程修了。専門は日本近代文学、書誌学。社会評論にも幅広く活躍。サントリー学藝賞、大阪文化賞、『文豪たちの大喧嘩─鷗外・逍遙・樗牛』で読売文学賞受賞。
著書に『完本・紙つぶて』『百言百話』『回想 開高健』『人間通』『歴史通』、『だから、論語を学ぶ』(渡部昇一氏との共著、ワック)など多数がある。2011年3月逝去。

目次

プロローグ 『孫子』の醍醐味とは

 

人生とは競争によって成り立っている──谷沢

心に響いた「兵は拙速を聞く」──渡部

確立されていた将軍の権威──谷沢

実際に成功に繫がる教え──渡部

戦争は危機を脱する手段──谷沢

現代の経営者、政治家に読ませたい本──渡部

 

一、 計篇──戦う前になすべきこと、心がけるべきこと──

 

戦いは軽々しく始めるべきでない

【兵は国の大事(計 一)】

準備なしに始めた大東亜戦争──谷沢

慎重だった明治のリーダーたち──渡部

日露戦争はなぜ勝てたのか──谷沢

前大戦の失敗の本質を見極める──渡部

理不尽な行為には断固怒れ‼──谷沢

早くから旗印を掲げた信長──谷沢

石油を止められた日本人の立場──渡部

 

正直なだけでは生き抜けない

【兵は詭道なり(計 三)】

騙すことこそ人生の大道──谷沢

世界では詭道と詐術に境界がない──渡部

能力は誇示しすぎず、隠しすぎず──谷沢

無能を装った大石内蔵助──渡部

信長は『孫子』を読んでいた──渡部

 

冷静な算盤で考える

【廟 算(計 四)】

大事なことを計算しなかった艦隊派──渡部

東郷平八郎は無謬の将軍ではない──谷沢

本当の計算のできる人ほど疎外される──渡部

 

二、 作戦篇──最小の犠牲で最大の効果をあげる策の基本──

 

目的のためには金を惜しまない

【日に千金を費して、十万の師挙がる(作戦 一)】

軍艦を惜しんだ海軍軍人──渡部

軍艦の目的を見失った海軍──谷沢

 

すべての勝負はスピードが肝心

【兵は拙速を聞く(作戦 二)】

時間をかける戦争、かけない戦争──谷沢

シナ事変が長引いたのは痛恨の極み──渡部

日本陸軍には自動制御が欠落していた──谷沢

過失の責任をとらない大蔵省──渡部

 

三、 謀攻篇──戦わずに勝つための手段──

 

むやみな戦いをせず勝つ法則

【戦わずして人の兵を屈す(謀攻 一)】

共産圏は『孫子』に学んでいる──渡部

共産革命は敵の崩壊を座して待つ──谷沢

 

城攻めをしてはならない

【攻城の法(謀攻 二)】

優れた武将は勝って得るものを考える──谷沢

城攻めに手を焼いた武将たち──渡部

 

敵を知り、己を知れば負けることはない

【勝を知るの道(謀攻 六)】

日本はアメリカを知らずに戦った──渡部

世界を探る努力を放棄した日本陸軍──谷沢

「フロンティア・スピリット」という言葉を知らなかった日本人──渡部

 

四、 形篇──戦いのすがた──

 

優れた人物は目立たないところにいる

【不敗の地に立ちて、敵の敗を失わざる(形 二)】

目につきやすい功績は、真の功績にあらず──谷沢

表れない名将の名──渡部

 

勢いに乗ることが勝利の鉄則

【積水を千仞の谿に決するがごとき(形 四)】

ヒトラーは『孫子』を読んでいなかった──渡部

四千の兵が一万五千の兵を破った鳥羽・伏見の戦い──谷沢

 

五、 勢篇──「形」を「動」に転ずること──

 

節目は瞬時に行なう

【激水の疾くして石を漂わす(勢 三)】

「激水」の疾さを感じる真珠湾攻撃──渡部

 

敵を誘き出して撃つ

【善く敵を動かす者は(勢 五)】

秀吉の誘導にはまった勝家──谷沢

チャーチルの誤算は、日本が想像以上に強かったこと──渡部

 

六、 虚実篇──「実」で相手の「虚」を衝く──

 

目に見えない、無形の力を持つ強さ

【兵を形するの極は、無形に至る(虚実 六)】

見えてこないユダヤ人財閥の力──渡部

目に見えない力の効果──谷沢

日本を世界の財閥が住める国に──渡部

二重スパイ、大いに結構──谷沢

 

変化に対応できる柔軟性とは

【兵の形は水に象る(虚実 七)】

天下を開いた秀吉の強運──谷沢

 

七、 軍争篇──戦闘の心得──

 

戦うための基本は物資の調達である

【輜重無ければ則ち亡び(軍争 二)】

輜重を軽く見た日本──渡部

懐疑的な発言は封じる日本陸軍の体質──谷沢

 

人目につかないところで迅速に動く

【其の疾きこと風のごとく(軍争 三)】

『孫子』に見る絶妙の比喩──渡部

文化を運んだ舌耕の徒──谷沢

八、 九変篇──逆説的発想の戦い方──

 

無理、無駄な争いはしない

【命を君に受け、軍を合わせ衆を聚むれば(九変 一)】

命令を握り潰した叩き上げの隊長──渡部

士官学校上がりをバカにしていた古参兵──谷沢

 

他人をあてにするのは愚かなり

【吾が以て待つ有るを恃むなり(九変 四)】

ヒトラーの援軍をあてにしていた日本軍──渡部

希望的観測で物事を判断するな──谷沢

 

九、 行軍篇──布陣法および敵情察知法──

 

生きるか死ぬかのときの判断

【半ば済らしめて之を撃たば(行軍 一)】

「宋襄の仁」にはなるな──渡部

「ええかっこしい」ではいけない──谷沢

 

素人の意見を無視しない

【鳥起つは、伏なり(行軍 四)】

観察力をいかに養うか──渡部

いまの不況を招いたもの──谷沢

 

十、 地形篇──地形に応じた戦い方──

 

部下をいたわりながらも、命令できるか

【卒を視ること嬰児のごとし(地形 四)】

家庭内暴力はなぜ起こるか──渡部

親や教師は命令権を確立せよ──谷沢

 

敵を知らなければ、己の立場も分からない

【彼を知り己を知れば(地形 五)】

国民の不信に気づかなかった社会党──谷沢

アメリカに「人民」はいない──渡部

建前を知って本音を知らず──谷沢

日本はなぜアメリカを理解できないか──渡部

日本人は外国を知らなければならない──渡部

 

十一、 九地篇──状況に応じた戦い方──

 

敵を内部から混乱、分裂させる法

【利に合いて動き(九地 二)】

日本軍と日本人の分断を図るインテリたち──渡部

ファシズムの担い手とは──谷沢

 

相手がもっとも大切にしているものは何か

【兵の情は速やかなるを主とす(九地 三)】

日本の痛いところをついたアメリカ──渡部

最愛のものを奪う──谷沢

 

迷信は禁じなければならない

【祥を禁じ疑を去れば(九地 四)】

将軍が神頼みだと危ない──渡部

神仏についての建前と本音──谷沢

 

危機に直面すれば団結する

【呉人と越人とは相悪むも(九地 五)】

第二次世界大戦に見る呉越同舟──谷沢

プロパガンダを鵜呑みにする学者たち──渡部

 

将たる者は、秘密主義でゆく

【能く士卒の耳目を愚にして(九地 六)】

将たる者の胸の内──渡部

信頼が不安を払拭する──谷沢

 

相手の考えをどう推察するか

【諸侯の謀を知らざれば(九地 八)】

心ある外交官の言葉を無視した日本──渡部

相手の立地条件を知る──谷沢

 

報酬はたっぷり与えよ

【無法の賞を施し(九地 八)】

戦後の平等主義は活力を低下させる──渡部

能力主義の時代には破格の扱いを──谷沢

 

始めは処女のごとく、後は脱兎のごとく

【始めは処女のごとし(九地 九)】

本当の脱兎はニミッツだった──渡部

しずしず攻めて素早く落とす──谷沢

 

十二、 火攻篇──火攻めの原則と方法──

 

もっとも効果的な攻撃法とは

【火攻に五有り(火攻 一)】

アメリカは早くから日本の火攻を考えていた──渡部

29の火攻め──谷沢

 

勝負にこだわり本来の目的を見失うな

【火を以て攻を佐くる者は明なり(火攻 三)】

費留は高くつく──渡部

 

一時の感情で行動を起こすな

【主は怒りを以て師を興すべからず(火攻 四)】

怒りが日本を滅ぼした──渡部

面子問題の怒り──谷沢

怒らなかった明治維新の日本人──渡部

冷めた怒りが維新を可能にした──谷沢

 

十三、 用間篇──情報活動──

 

情報収集に費用を惜しんではならない

【人に取りて、敵の情を知る(用間 一)】

日本は情報収集を冷遇した──渡部

スパイは厚く遇するほど効果がある──谷沢

 

情報のキーマンを育成せよ

【間を用うるに五有り(用間 二、三)】

スパイを使いこなせなくなった日本──渡部

プライベートが持つ力──渡部

 

プライベートな情報網を持てるか

【反間は厚くせざるべからざるなり(用間 四、五)】

生かさなければならない財閥の情報網──渡部

 

エピローグ

「宋襄の仁」にはなるな──渡部

古典は試金石──谷沢

 

あとがき

トップへ戻る