ソニーの原点とは!
“ソニー・太陽”──大分県日出町にあるこの会社は、ソニー創業者・井深大がその設立に奔走した、障がい者と健常者がともに働く工場である。約170人の社員中、110人が障がい者というこの会社こそ、「愉快なる理想工業」という東京通信工業(現ソニー)の“夢の実現化”であった──。「われわれは、世のため人のために最善をつくす」、ソニー教育財団の設立をはじめ、企業による社会貢献の「開拓者」であった井深大の信念と、その実現までの道のりをたどる。
著者プロフィール
宮本喜一(みやもと・よしかず)
1948年、奈良市に生まれる。ジャーナリスト、翻訳家。一橋大学社会学部、同経済学部卒業。ソニー株式会社に20年間勤務。主に広報(企業広報・技術開発)やテレビ・ビデオの企画・マーケティングを経験。続いてマイクロソフトにも3年間勤務した後、独立してビジネス書の翻訳や著作に取り組む。主な著書に『マツダはなぜ、よみがえったのか?』(日経BP社)、『挑戦続く東大先端研』(日経BPクリエーティブ)。翻訳書に『ジャック・ウェルチわが経営(上・下)』(日本経済新聞出版)、『ウェルチ』(日経BP社)、『トム・ピーターズのマニュフェスト』シリーズ(ランダムハウス講談社)、『ネットワーク経済の法則』(IDGコミュニケーション)、『ビジョナリー・ピープル』『勇気ある人々』(ともに英治出版)、『JUDGEMENT 決断力の構造』(ダイヤモンド社)など多数がある。城島明彦『ソニーを踏み台にした男たち』(集英社文庫)に紹介されている17人のうちのひとり。日本自動車研究者・ジャーナリスト会議(RJC)会員でもある。
目次
- 「何をするにしても、日本の再建につながる仕事を」
- 〝テクノロジーの開拓者〟と〝社会を見つめる経営者〟のふたつの顔
- 「世のため人のためが当然」の企業風土
- 三二歳で日本測定器株式会社の常務取締役に
- 戦時研究委員会での経験
- 「世の中は何もかも変わったんだ。東京へ出ていかなきゃ」
- 短波ラジオ用コンバーターの製造販売を開始
- 東京通信工業株式会社の「設立趣意書」
- 「われわれは、世のため人のために最善を尽くす」
- 「謹告」と大書された新聞朝刊の全面広告
- 戦後の企業の中でも先駆的な決断
- 大量生産のできる製品を追い求めていた
- 〝未来技術〟・テープレコーダー開発への挑戦
- 全国各地の学校行脚でテープレコーダーのデモンストレーション
- 日本初のトランジスタラジオ
- 東京通信工業株式会社からソニー株式会社ヘ
- スプートニク・ショックと神武景気の到来
- 「理科教育振興資金」の発想
- 利益の一パーセントにあたる金額を受賞校に
- 全国の小学校から応募が殺到
- ソニーの担当者も審査員も審査に没頭した
- 審査員三人の思い
- 賞金は行政当局の一〇年分の予算額の一・五倍
- 教育現場では教師全員の一致協力する空気が生まれた
- ソニー理科教育振興資金受賞校連盟の結成
- 盛田新社長就任のパーティ費用を、五人の先生の海外研修費用にあてる
- 井深の狙い通りの成果をあげた海外視察研修
- ある夏の日のソニー本社応接室
- 「リハビリテーションとは、〝納税者〟をつくること」
- 「太陽の家」の生みの親・中村裕
- 井深は、イエスともノーとも答えなかった
- 従業員五五人、うち身体障がい者五〇人のオムロン太陽電機が生まれる
- 社会福祉法人太陽の家 特機科ソニー
- 特機科ソニーから株式会社サン・インダストリーへ
- 一九八一年九月、特例子会社ソニー・太陽株式会社の誕生
- 「ウォークマン」の生みの親・大曽根幸三の即断即決
- 「『ウォークマン』のおかげで、どんな製品でもできる」
- 「知恵遅れの子どもたちのことを考えると、見過ごすわけにはいかない」
- 「すぎな会」から始まった身体障がい者、知的障がい者への取り組み
- 「希望の家」、栃木県鹿沼の地に生まれる
- ソニー教育振興財団の設立
- 井深の視野は、理科教育から教育全般に広がる
- 幼児開発協会の発足と理科教育振興活動の質的転換
- 理科教育を重視しながらも、ゆたかな心を持つ〝人づくり〟へ
- 井深の志を受け継ぎ、着実に広がる教育財団の活動範囲
- 教育財団の変革に取り組んだ渡辺亘之
- 「科学の泉─子ども夢教室」にたくした白川英樹の思い
- 「ウォークマン」七五万台の生産を一六か月で達成
- 「ソニー・太陽の経営者は、身体障がい者にするべきだ」
- 売上高五八億円強、従業員一八一人にまで成長したソニー・太陽
- ソニーの人事部門「障がい者雇用推進部」
- 知的障がい者が生産活動を
- ソニーに頼らず、地域に根ざし、入所者が自立した生活を送れるように
- 井深同様、本田も〝世のため人のため〟を常に忘れなかった
- ホンダ安全運転普及本部
- 「よし、やろう。ホンダもこういう仕事をしなきゃダメなんだ」
- 「オムロン太陽電機が長男、ソニー・太陽が次男、ホンダ太陽は三男坊」
- 立石一眞の哲学
- 井深がプレゼントを始めたランドセル
- 「For the Next Generation(次世代のために)」