
渡部昇一の「日本の歴史」第二弾! 昭和篇である。
第二次世界大戦後の世界では、戦前の日本はすべて悪で、アメリカはすべて善と見る風潮が流行っているが、果たして本当にそうなのだろうか? ことは、それほど単純に割り切れるものではない。この当時のアメリカは、国内でのフロンティアは消滅し、シナ大陸における植民地競争に加わりたいと熱望していた。しかし、その障害となったのが、日露戦争に勝利した、太平洋を隔てて清国と隣り合う日本であった。
そのため、アメリカは日本排除のためのあらゆる策謀を企てる。まず、アメリカ国内での日本人移民排斥運動から始まり、英国とのブロック経済圏化により、世界経済からの日本締め出しを図る。そして、ABCD包囲網により日本への石油をストップさせる。仕上げは、日本を追い詰めるためのあの脅迫的「ハル・ノート」の作成だ。
歴史の事実を一つひとつ丁寧に検証すれば、戦後、マッカーサーが米議会で証言した通り、日本の戦争は自衛の戦争だったことがよく見えてくる。
著者プロフィール
渡部昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英語学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr. phil., Dr. phil. h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『取り戻せ、日本を。 安倍晋三・私論』『読む年表 日本の歴史』などの話題作やベストセラーが多数ある。
目次
第1章 アメリカの対日憎悪
- アメリカこそ征服欲鮮明な国家
- シナ大陸切り取り競争に参加したアメリカ
- 新たなるフロンティアは太平洋の西にあり
- シナ移民との激突
- シナ人殺しが始まった
- 法律による日本人排斥運動
- 「人種差別継続」を決めた国際連盟
- 恐怖と憎悪が生んだアメリカの排日運動
- 日系人に対するアメリカの暴挙
- 「この大戦の遠因はアメリカ移民の問題にある」
- 対米感情を一変させた排日移民法
- 日本を追いつめた脅迫的「ハル・ノート」
- マッカーサーも認めた「自衛戦争」
- 日英同盟を敵視したアメリカ
- アメリカとカナダは「同じ穴の狢」だった
- シナの反日運動を利用したアメリカ
第2章 ファッショと社会主義の誕生
- ホーリー・スムート法で始まった大恐慌
- ブロック経済が日本とドイツを戦争に追い込んだ
- 浮上した「社会主義」経済思想
- 双生児だったヒトラーとスターリン
- 社会主義的経済政策は覚醒剤のようなもの
第3章 ソヴィエト社会主義と「右翼社会主義」
- 「天皇制廃止」に拒否反応を示した日本人
- 効果的だった治安維持法
- 治安維持法で死刑になった共産党員はいない
- 治安維持法の“亡霊”
- 軍国主義は「天皇親政」による社会主義
- 青年将校による〝昭和維新〟の実態
- 自由経済攻撃の生贄となった財界首脳
- “クリーンな”軍人、東條英機
- “天皇の官僚”の台頭
- 「経済版の参謀本部」企画院の設立
- いまなお残る統制経済の始まり
第4章 リーダーのいない「二重政府」の悲劇
- 関東軍はなぜ暴走したか
- ロンドン軍縮会議が引き金となった統帥権干犯問題
- 憲法上、軍部は政府の言うことを聞く必要はない
- 元老が死に絶えた不幸
- 第一次世界大戦の要因はプロイセン型憲法の欠陥
- 批判も改正も許されなかった明治憲法
- 信頼を失った日本外交
- 軍に乗っ取られた日本の政治
- 有名無実の「大本営」
- 命令系統なき戦争指導こそ昭和最大の悲劇
- 統帥権に〝復讐〟された軍部
- 茶飲み話のような「最高戦争指導会議」
第5章 満洲建国の必然性
- 関東軍出動は居留民保護のため
- 満洲建国は文明的な解決策
- 日本の保護を求めた溥儀
- 東京裁判における溥儀の虚偽証言
- 日本が主張した「アジア・モンロー主義」
- 「五族協和」の理想を掲げた満洲の繁栄
第6章 葬られたシナ事変の真実
- 悪しき先例となった満洲事変
- 中国共産党が仕組んだ盧溝橋事件
- 歴史から消された通州事件
- 計画的・組織的だった邦人居留民虐殺
- 蔣介石の“戦争犯罪”第二次上海事変
- シナ事変の背後にいたソ連とドイツ
第7章 「南京大虐殺」の幻影
- 軍規を徹底させた南京攻略
- 「南京大虐殺」説の怪
- なぜ誰も「虐殺」を知らなかったのか
- 抗議すらしなかった中国政府
- 非現実的な「大量虐殺」
- 南京の人口がひと月で五万人も増えた理由
- どこから煙が立ったのか
- 中国兵の集団的不法行為
- 正規の戦闘による死も「虐殺」
- 投降兵と捕虜とは違う
- 連合国側の反日プロパガンダ
- 日本軍を悩ませた便衣隊
- “謝罪外交”の国賊的行為
- まず問われるべきは蔣介石の責任
- 原爆と東京大空襲という民間人大虐殺
- 陸軍を泥沼に追い込んだ文民統制
第8章 日本外交「二つの大罪」
- 「日米開戦」はチャーチルが仕組んだ
- “泥縄式”に始まった対米戦争
- 日本の外交官が「奇襲攻撃」にしてしまった
- 真相を隠し続けた駐米大使たち
- 国を滅ぼしてもかばいあう体質
- 日米交渉の致命的な判断ミス
- アメリカは“皆の衆”国家
- 話す相手を誤った日本政府
- 蔣介石の巧妙な対米外交センス
- “もう一人の大使”の必要性
第9章 太平洋における攻防
- 日本軍に対抗できるのは米軍だけだった
- 命運を分けたミッドウェー海戦
- 神通力を失った零戦
- 日本軍に生まれた“必死隊”という概念
- 英米の犯罪「一般市民大虐殺」
- 「沖縄決戦」の犠牲