万葉集のこころ 日本語のこころ

渡部昇一 著
定 価:
本体920円+税
判 型:
新書判
ページ数:
248ページ
ISBN:
9784898317976
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「令和」や出典の『万葉集』にイチャモンつける人たちにも読ませたい!!
渡部昇一さんの“正論”

万葉集から選ばれた新元号「令和」
日本人なら知っておきたい万葉集
万葉・大和言葉によって日本人は作られた

欧米人や近代人は個人生活においては「神の前で平等」「法の前の平等」を追求するだろう。しかし、日本人ははるか昔から「和歌の前に平等」を実現していたのだ。『万葉集』は、大伴家持が重要な役割を果たしているが、カースト的偏見はなく、農民、遊女の歌まで収録されている……。
戦前の子供たちは、今よりはるかに多くの漢字を知っていた。そういう戦前の小学生たちが必ず唄わされた歌に、四大節の歌がある。「四大節」という言葉も死語同様になったが、一年のうちで最も大切な儀式が行われる四つの祝日のことである。四大節の歌はすべて大和言葉の歌であり、これをすべての児童が唄っていたということは、知らず知らず、どこかに古代の言霊に連なる感覚を、日本人みんなが共有することになっていたのではないだろうか。
 さらに言えば、国歌の「君が代」もすべて大和言葉である。
(本文より)

著者プロフィール

上智大学名誉教授。英語学者。文明批評家。昭和5年(1930年)、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr. phil., Dr. phil. h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。
著書に『英文法史』などの専門書のほか、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』『渡部昇一 青春の読書』などの話題作やベストセラーが多数ある。平成29年(2017年)4月17日、逝去。

目次

    章 日本語の核心にあるもの

──「祝日の歌」と大和言葉

四大節の歌と日本語

一月一日と紀元節の歌

天長節、明治節の歌と国歌

核心部にある大和言葉

 

第1章 大和言葉こそ日本語の源23

 ──外来語の漢語と何が違うか

大和言葉とは何か

漢語主体の歌の心情

大和言葉主体の歌の心情

外来語が外来思想を運ぶ

魂のふるさととしての大和言葉

名句は大和言葉から成る

大和言葉の世界と漢語の世界

漢語を用いる効用

片かな外来語の異化効果

蕪村・芭蕉・円朝と大和言葉

茂吉のグレイトネスの淵源

「新しい皮袋」説の浅薄

現代俳句は外来の語彙から腐る

山頭火の国民詩人たる由縁

第2章 万葉集の思想と大和魂の本質

──和歌の前に貧富貴賤女卑なし

「和歌の前に平等」の原理

和歌三神のバランス

和歌の前では性差別も消滅

和歌の起源と古代日本人の言語意識

皇子と火焼老人の交歓

神武天皇の歌と言霊の思想

大和魂の本源は求婚歌だ

男女の愛で国がはじまる

言葉自体に霊力がある国

「言挙げせぬ国」の起源

「伝達の手段」を超えるもの

なぜ表現が短縮されるか

舒明天皇とシェイクスピアの違いの根源

第3章 文化大輸入時代の和歌と言霊観

──尚古にして発展の真髄

重要なのは万葉集と古今集の連続性

外国文化輸入の例、鷗外と茂吉

漢語漢籍大流入時代の古今集の意義

大和言葉の普遍性

古今集序文、平安朝日本人のこころばえ

「鬼神をもあはれと思はせ」る言霊

注目すべきは尚古にして発展の相

なぜ帰化人・王仁が「歌の父」か

侍女が「歌の母」となった平等感覚

名歌となる条件とは何か

「和歌の徳」という観念の広がり

昇進を助けた和歌の徳

貫之に引き継がれた言霊信仰

「鬼神」や「天地」を動かす

頼朝が焼き付けた「和歌の徳」

「古今伝授」と細川幽斎のドラマ

壬生忠岑の言霊的伝説

縁起かつぎの原型

曾根好忠に見る「差別と平等」

和歌における革新とは何か

第4章 漢語混入で変わった日本語の原理

──外来語受容にみる英・独・仏語との比較

源氏物語の特殊な難解さとは

ノーマン・コンクェストの甚大な影響

ゲルマン語とラテン語はいかに混合したか

外来語混淆のパタン

英文学史と日本文学史の相似性

難解さの主因は語彙の代替

古英語と同質、大和言葉の根の張り方

漢語の混入で日本語の原理が変わった

フィヒテの「生ける言語」と「死せる言語」

国語の感性的部分と超感性的部分

言語の前の不平等

カントの哲学用語は難解か

何が知的英文と感性的英文を分けるか

海を謳う詩の言語

スチーブンソンと三島由紀夫の辞世

余論/海の記憶・日本人とゲルマン人

第5章 精神的資産としての日本語 

──国語教育と外国語教育の役割

桜に感動する日本人

母国語の蓄積効果

国語は世界観である

「精神的私有財産」としての近親関係語

日本語のタテ糸を追放した国語教育

「精神的私有財産」の継承を

外国語教育は知性の練磨である

外国語教育と国語教育の真の意義

 

新版あとがき

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