街の中でも、会社でも、学校でも、必ずと言っていいくらい人の悪口を平気で言う人がいる。また、近年では、ネットで匿名性を盾に、悪口やら誹謗中傷まで、他者を徹底的に攻撃する傾向が強まり、これが、いじめやパワハラ、セクハラなど大きな社会的問題や事件にまでも繋がっている。本書は、人はなぜ、悪口を言いたがるのか? その深層心理、そして、悪口・誹謗中傷を助長する問題の核心に迫り、撃退法までを伝授する。言ってみれば、どこにでもいる「困った人」とは、どんな人で、そうした人にはどう対応したらよいのか、最近、なぜ、そういう人が増えてきたのか等が、手に取るように分かる。
著者プロフィール
和田秀樹(わだ・ひでき)
国際医療福祉大学大学院教授。川崎幸病院精神科顧問。和田秀樹こころと体のクリニック院長。1960年、大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科を経て現在に至る。著書に『感情的にならない本』(新講社)、『45歳を過ぎたら「がまん」しないほうがいい』『「忙しい」「時間がない」をやめる9つの習慣』(大和書房)、『医療のからくり』(文春文庫)、『大人のための勉強法』『老人性うつ』(PHP新書)など多数がある。
目次
- まえがき
序 章 ネットにあふれる、危険な「悪口」
- 人間は昔から「悪口」が大好き!
- 一千万人がネットに「悪口」を書き込む時代
- ネットの「悪口」が犯罪になってしまう時代
- イスラム国のコメントに「悪口」で応酬した危険な人たち
第1章 人はなぜ「悪口」が好きなのか?
- どうして人間は悪口を言うのか
- 悪口を言う人にはいくつかのタイプがある
- 子供は悪口が多いが、大人になるにつれて減っていく
- フロイトは「ジェラシー型の嫉妬」があると考えた
- クラインは「エンビ—型の嫉妬」によると考えた
- アドラーは「劣等感」が背景にあると考えた
- コフートは「自己愛」が満たされない状態と考えた
- 現代はフロイトよりコフートの考え方が支持されている
- 悪口の目的は、社会的メリットより心理的メリット
- 娯楽の一つとして何気なく悪口を言う人もいる
第2章 「失われた二十年」で
日本人のメンタリティが変わった
- バブル崩壊後から「悪口」が増え始めた
- ハングリー精神は、ほとんどなくなってしまった
- 若者が感じている社会的不満が、悪口の原動力に
- バブル世代とまったく意識の違う若者たち
- 中韓からの悪口が、日本の悪口を増やした
- 攻撃性が自分より「弱い人」に向いてしまう社会
- 弱い者が集団の圧力を恐れて反論できなくなっている
- 昔は窓際族が会社に残れたが、今はいびり出される
- 「オレのほうが偉いんだ」と見せ付けたい心理
- 公務員に対してクレームをつけて威張る住民
- 「身分の固定化」が不満を増大させる
- 学歴も事実上世襲される時代に
第3章 タテマエのみの学校教育が「悪口」に走らせる
- ホンネを押さえつける教育で、子供たちの鬱憤がたまっている
- いじめ撲滅のためにホンネを抑圧している小学校
- 親たちもいじめを恐れてタテマエ中心になっている
- 本能を「キレイゴト」で押さえつけてしまった
- 内的な道徳観を持てない人が増えている
- みんなと一緒にやっているから、いじめを悪いと感じない
- ホンネで友達と付き合えなくなっている思春期
- 学校でタテマエを言って、ネットでホンネを言う
- 優秀な子を褒めないので、子供が自己愛を満たせない
- クラスを支配する「スクールカースト」という身分制度
- 無条件の愛が子供の自己愛を満たす
- 子供を褒める機会が圧倒的に減っている
第4章 「悪口」を助長しているテレビメディアの罪
- 「これでもか」というほど徹底的に人を叩くテレビメディア
- テレビで「悪口」がもてはやされ、子供たちに影響
- ネットの悪口もマスコミに影響されている
- テレビが流す意見が「自分の意見」になる時代
- テレビは異論を許さないのでよけいに意見が一律化する
- マスコミに流されて自分の価値基準が決まるのは恐ろしいこと
第5章 「悪口」を言わないスキル、言わせないスキル
- 悪口をどう克服するかは、誰にとっても大きなテーマ
- 悪口を言わずにすむ方法は?
- 他人から受け入れられる形に悪口を「昇華」させる
- 悪口をやめて「批判」に変えていく
- 悪口を言われたときは、無視を決め込む
- ネットの悪口はできるだけ見ないようにする
- 悪口を言う相手を自分の懐に取り込んでいく
- 悪口を言う相手の長所をあえて褒める
- 言われている悪口と真逆の行動をする
- 「ブラック」という悪口を撃退するには行動しかない
第6章 「名誉」を大切にする日本人の心を取り戻せ
- 日本人の心性に合わない叩き方をしている
- 「カネ社会」でなく、「名誉社会」を取り戻せ
- 「カネ」は世襲できても、「名誉」は世襲できない
- 名誉を大事にする人なら、悪口は「人品卑しい行為」と考える
- 道徳教育は「道」ではなく「徳」を教えることが大事
- グローバリズムが日本の「名誉システム」を崩壊させる
- 欧米よりも「名誉」を重視するのが日本社会