敗戦濃厚となった戦争末期、数多の特攻兵が沖縄の海に散っていった。特攻基地といえば、多くの人が鹿児島の知覧特攻基地を思い浮かべるだろうが、知覧の北西20キロに幻の特攻基地「万世」があった。戦後、この特攻基地は誰からも忘れ去られた存在となっていた。飛行第六六戦隊の苗村七郎は、戦争末期、この万世基地に仙台から転属した。苗村は特攻に志願しながらも、沖縄の海に散って行った仲間たちを見送る側になってしまった。戦後、苗村は、自分だけが生き残ったという思いを引き摺りながら、その思いを振り払うかのように、忘れ去られた特攻基地と特攻に散った男たちの掘り起しに、生涯のすべてをかけたのである。
特攻とは何だったのか、戦争とは、戦後とは? 著者渾身の感動のノンフィクション!
著者プロフィール
清武 英利(きよたけ・ひでとし)
ジャーナリスト。1950年、宮崎県生まれ。立命館大学経済学部卒業後、75年に読売新聞社に入社。青森支局を振り出しに、社会部記者として、警視庁、国税庁などを担当。中部本社(現・中部支社)社会部長、東京本社編集委員、運動部長を経て、2004年8月より、読売巨人軍取締役球団代表兼編成本部長。2011年6月、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行。同年11月18日、解任。著書に『しんがり 山一證券 最後の12人』(第36回講談社ノンフィクション賞受賞)『切り捨て SONY』『Yの悲劇 独裁者が支配する巨大新聞社に未来はあるか』(講談社)、『私の愛した巨人』『巨魁』(ワック)などがある。
目次
プロローグ 斎場の万歳三唱
第1章 幻の特攻基地
- 戻ってきた航空兵
- 空人
- 「特攻の母」
- 犬を抱いた少年兵
第2章 「海商十一代目」の夢
- 誘致
- 消えた飛行学校
- ある特攻兵の日記
- 「父恋しと思はば空を視よ」
第3章 墓守たちの戦後
- 三度の倒産
- 「流れ星」の音
- 未だ還らず
- 亡き愛子に告ぐ
第4章 物書く元兵士
- 「よそ者」が建てた慰霊碑
- 母親たちの悲憤
- 「生きている限り、書く」
- 息子との激論
第5章 三十四年目の祈念館
- 親友の遺書
- 乗り込んだ老兵
- ドン・キホーテと反発
- 生還特攻隊員の弔辞
エピローグ 最後の一千万円
あとがき