株価やGDP成長率を見ると、アメリカ経済は一見好調だ。しかし、それは表面的な姿に過ぎない。所得が伸び、消費が活発なのは高所得者だけで、庶民は深刻な貧困にあえいでいる。下層民はスーパーマーケットどころか、100円ショップでの買い物さえ厳しくなるほど困窮しているという。
近年、貧困を背景とした暴動がアメリカ各地で頻発しているが、金持ち連中は知らん顔。自分たちはgated community(ゲイテッド・コミュニティ)という塀で覆われた住宅地で、高みの見物を決め込んでいる。
アメリカをすさまじい格差社会にしたのは、政治家・ロビイスト・利権産業の癒着だ。彼らが金持ちに有利な国づくりに励んでいる。
昨今の日本では「アメリカの制度を導入しよう」と主張する経済学者、経営者が増えている。だが、本書を読めば、そんなことは口にできないはずだ!
著者プロフィール
増田悦佐(ますだ・えつすけ)
経済アナリスト・文明評論家。
1949年、東京生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で歴史学・経済学の博士課程修了。ニューヨーク州立大学助教授を経て、外資系証券会社で、建設・住宅・不動産担当アナリストなどを務め、現在に至る。
著書に『不確実な未来を生き抜くための「経済史」』(SB新書)、『城壁なき都市文明 日本の世紀が始まる』(NTT出版)、『戦争とインフレが終わり激変する世界経済と日本』(徳間書店)、『やはり、日本経済の未来は世界一明るい!』(ワック)など多数がある。
目次
はじめに
第1章 アメリカ化が進みつつある日本
- アメリカ型社会のマネは不幸を招くだけ
- 経営者と従業員の所得格差が広がっている日本社会
- 先進国の中で最も低賃金労働者が多い国とは
- なぜ「自社株買い」が増えているのか
- 「ROE経営」は借金の割合を増やす不健全な経営
- アメリカ方式の導入で薬価が高騰したオーストラリア
- くるぶしまで糞尿に浸かった状態で飼育される牛
- 著作権料の支払いを免れているグーグル
第2章 人種差別大国アメリカ
- クルマ社会が差別を助長した
- 最近は年中行事のように頻発する暴動
- 白人の中でも格付けの差がある
- アメリカ黒人には「アメリカンドリーム」はない
- 中学校に麻薬の売人が来て取引
- アイルランド系のケネディ一家の成功は、例外中の例外
- 日本よりはるかに厳しい学歴社会
- 貧しい者同士が対立しても、金持ちは高みの見物
第3章 止まらない中流・下流の貧困化
- 貧困のために百円ショップでの買い物も厳しくなってきた庶民
- 潰れて野ざらしにされるショッピング・モール
- アマゾンの売り上げは伸びているが、利益は拡大していない
- 金持ちは健康でスマート、貧乏人は不健康で肥満
- 医療費が払えずに、銃で自殺する高齢のプアホワイト
- 移民流入がさらに賃金を低くしている
第4章 金持ちはますます金持ちになる
- 金持ちだけが潤う経済は、だんだん冷え込む
- 経営者の退職金は七十三億円、従業員は三十八万円
- 社外取締役制度の本質は、役員同士が収入を上げるための助け合い
- 似た者同士のアメリカと中国
- 倒すべき相手がわかれば、下層の不満が一気に噴出するかもしれない
第5章 利権産業・ロビイスト・
政治家の癒着こそ、全ての元凶
- 二度の世界大戦が独占企業を許すようになった
- ロビイストを雇える業界だけが儲かる
- 金融業界は実質的な国有産業
- 金融機関経営者は不正をしても刑を免れる
- クリーンなイメージだが、実は悪辣な民主党やリベラル派
- 政治家を手なずけて、国民に高い薬を買わせる医療業界
- 軍需産業の利権のための戦争
- 第二次大戦で日本が敗れた本当の理由
- 心の底ではイスラム国のような組織の出現を願っている
- 収益に対して、アップルの税金の支払いが少ない理由
- 一流大学の学費は一年間で約六百万円もかかる
- 学費ローンの急増と若者を食い物にする営利事業大学
- 三回目の有罪判決を受けたら、問答無用で終身刑が科される
- 受刑者を低賃金で働かせてボロ儲けする民営刑務所
- 警察の解散を決めた自治体
第6章 アメリカ経済は今どうなっているのか
- 好調な情報通信産業、壊滅的な自動車産業
- 小売業は、金持ち向けの店と庶民向けの店に分かれていく
- 補助金でも支えきれないほど厳しくなってきた農業
- 経営者にとって、会社の存続よりも自分の報酬を増やすほうが大事
- アメリカと中国がともに没落すれば、世のため、人のためになる
- 経済は市場に任せて、国が関与すべきではない
第7章 中国、EU、アメリカも崩壊の道へ、
そのとき日本は?
- あとどれくらいで中国共産党政権は崩壊するのか
- もはやアメリカに世界経済を牽引する力はない
- 安定して経済発展をしている国の企業ほど、利益率が低い
- 経済がグローバル化しても、賃金を下げる必要はない
- これからも日本のものづくりは世界で優位に立つ
- 日本経済「失われた二十年」の真相
- 経済産業省は無くなったほうがいい省庁の最たるもの
- デモをするのもいいが、選挙に行くことが何より重要
- デフレでも経済成長すれば給料は上がる
- これからの経済を生き抜くために私たちがすべきこと
おわりに